stanleyk2001

メイド・イン・バングラデシュのstanleyk2001のレビュー・感想・評価

4.0
「メイド・イン・バングラデシュ」Made in Bangladesh、শিমু / Shimu 2019

「あなたは1日に何枚Tシャツを縫うの?」
「1650枚」
「あなたの月給はこのシャツ2.3枚分」

「結婚しても結婚しなくても女に自由はない」

一つ目の会話が表しているのはかつては南北問題、今は「グローバル・サウス」と呼ばれる先進国が発展途上国の安い労働力を搾取している問題。

二つ目のセリフが表しているのは男尊女卑・権威主義。

この映画は労働組合を設立した女性の実話をもとにしている。

発展途上国に生まれた女性を苦しめるブラック企業とモラハラ男。

しかし主人公シム・アクターは黙っていない。
「残業代払え!ふざけんな!
触るなバカ!」
いざという時は悪態をついて抵抗する。しかし社長達は威張り脅して黙らせる。縫製工場は男が脅すと大人しくなる女性を好んで雇うのだ。

IMDBの読者に「現代の『ノーマ・レイ』と評した人がいる。ノーマは男性組合員からオルグされて組合を結成するが「メイド・インバングラデシュ」のシムは女性の団体職員ナシマと出会う。ナシマは組合を作って団体交渉すべき。法律は組合を作ることを認めていると教えてくれる。アメリカと違いバングラデシュでは男性は女性を助けてはくれない。女性を助けるのは女性だけだ。

安い給料でこき使われる同僚は割と簡単に組合設立の署名に協力してくれる。工場長と不倫しているダリヤを除いて。しかしダリヤはシム達が組合を作ろうとしていることや会社の様子を密かにスマホで撮影したりすることを密告したりはしない。それはシム達と同じ「虐げられている性」という連帯感があるからだろう。

社長は役所にまで手を回して組合設立を妨害する。

シムの前に立ちはだかるのは社長だけではない。夫も非協力的だ。無職のくせに頭ごなしに組合活動をやめろと迫る。髪を引っ張る。

スマホを武器にシムは戦い遂に組合を国に登録する。不敵な笑みを浮かべたシムと仲間たちの会社との戦い、「団体交渉」が始まるのだ。痛快な映画だった。勇気と元気をもらった。

予告編にもあるカットが印象に残った。それは水溜りに飛び石として置かれたレンガを踏んで会社へ向かうシム達というカットだ。

バングラデシュは水溜り。国も貧しくインフラも立ち遅れている。通りはゴミだらけだ。だが水溜りに飛び石を置いて進んでいくのだという様に思えた。

戦いを始めたシム達にある言葉を贈って応援したい。

それは2018年 ドキュメンタリー映画『RBG 最強の85才』でルース・ベイダー・ギンズバーグ合衆国最高裁判事が朗読した一言。もとはアメリカの奴隷制度廃止運動家だったサラ・ムーア・グリムケの言葉で、ギンズバーグは判決文に引用したこともある(wiki)

「女性を優遇してくれとはいいません。男性の皆さん、私たちを踏みつけるその足をどけて」
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