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GAME KING 高橋名人VS毛利名人激突!大決戦のKKMXのレビュー・感想・評価

3.5
 ファミコン名人である高橋名人と毛利名人の世紀の対決を描いたガーエー。スーマリの映画が人気とのことで鑑賞。その辺の低予算TV番組的な造りで尺も30分、しかしながら内容はゲーム実況なので、なんとなく30〜40年後を先取ったと言えなくもなくもないガーエーです。

 しかし、ファミコン名人。たまんないワードセンスですよ。かなり紙一重かと思いきや、実はギリギリでもなんでもなく単に100%マヌケという響きに心を奪われます。名人って称号を現代にも甦らせたいです、名人。ハイセンスなゲーム配信者とかに名乗ってほしいですね、名人。


 高橋名人は自分がクソガキの頃に人気を博したトリックスターで、周囲のガキどもはみんな高橋名人をマジでリスペクトしており、ゲームにあまり興味が無かった自分は「こんな胡散臭い輩を崇拝するとはどいつもこいつも低脳だな」とバカにしまくっていましたが、今観ると高橋名人イカしますね!周囲のガキども正解ッッ!

 そもそも高橋名人は顔がジェームズ・ブラウンに似ています。JB似ってだけでクラウス・キンスキー並みにヤバいと言えますし、西田敏行ばりに最高とも言えます。しかしJB味は本当にスペシャルなパワーを感じさせるなぁ。魔的な力がありますよ。ちなみに名人、ファッションセンスもどことなくファンキーでそこはかとなくJB味あり。
 フィジカル推しなのも素晴らしく、なんか肉体労働とかで鍛えているギミックもイカします。その後、Eスポーツというジャンルが誕生し、実際に反射神経や瞬発力が必要なジャンルなのでフィジカル推しなのも超大枠では筋が通る。細かく見ると筋通りませんが(肉体労働関係ねぇだろ)。ちなみにヘルメットに『高橋』と書かれているのがイカす。高橋名人おっちょこちょいっぽいから、名前書いてないと無くしちゃうんでしょうね。
 本作の序盤はトレーニングシーンがあるのですが、16連射(1秒間に16発弾を発射できるとのギミック)でスイカを割るシーンは最高ですね!マス大山の牛殺しの系譜に連なる格闘ファンタジー感がたまりません。なんかすげーバキっぽい。16連射によるスイカ割り!自己を発狂寸前にまで追い込む荒業を条件にこの技は実 在 す る !!

 あと、名人は試合前に弱音を吐きます。「ファミコンなんかでなんでこんな思いをしなきゃいけないんだ」。プロならやり切れよ……と言いたいですが、ファミコン名人のプロとは何かという命題にブチ当たるのでその言葉はグッと飲み込みました。
 きっと高橋氏は時代の濁流に飲まれて名人というキャラを引き受けざるを得なかったのだろうなぁとリアルワールドを想像させますね。この辺のアマチュアイズムが所詮流行り物の子ども向けエンタメって感じがして味わい深いです。


 ライバルの毛利名人は少しアダム・ドライバー味のあるイケメン。技の毛利、パワーの高橋というライバルのキャラ付けも見事。ジュリアvs中野たむばりにライバル感が伝わります。ただ、毛利名人は単体でのキャラは弱く、名人ありきのキャラなのが惜しいところです。

 本編のゲーム対決はあんまりよくわかりません。ただ、実況が煽りに煽り、優位に立っていた高橋名人がミスって窮地に陥るとか展開が結構シーソーゲームなので盛り上がります。かなりプロレス味があり、わからないながらも熱量は感じました。
 観客のチビッコたちの盛り上がりもヤバく、名人対決を見守る瞳は純真でマジそのものです。スターダムの選手たちにクソリプ送りまくるキモ中年ツイッタラーどもに爪の垢を飲ませてやりたいね。
 しかし、観客の澄んだ瞳のキッズたち(ダブル複数形)はロスジェネど真ん中なので、その後就職氷河期で漂流し、新自由主義の濁流に飲まれてブラック企業で搾取され、資本の理論でゴミのように使い捨てられたりしたんだろうなぁと思いを馳せると、失われた30年の罪深さに戦慄します。名人どころじゃないね。

 ちなみに挿入歌は坂上忍!作詞作曲という熱の入りようでした。人に歴史ありです。



【名人スイカ割り】

https://youtu.be/A6MoEj_Hs7Y
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