Ricola

劇場版 きのう何食べた?のRicolaのレビュー・感想・評価

劇場版 きのう何食べた?(2021年製作の映画)
3.6
いい意味でTVドラマ版とノリや内容に大きな違いがなく、またシロさんとケンジ、おなじみの仲間たちに会えて嬉しくなった。

価値観の相違やお互いを思い合うがゆえのすれ違いなど、二人の関係性に少しぐらつきはあっても、それに対してもお互いに向き合って話し合う。
美味しそうな食事だけでなく、こういったあたたかなコミュニケーションや人の優しさも癒やされるのがこのシリーズ作品の魅力である。


マイノリティだけでなく、それぞれの人生や愛のあり方が肯定的に描かれている。それは現代社会に迎合しているというより、シロさんとケンジの姿勢そのものが作品全体に投影されているようだ。
シロさんの扱う事件のホームレスの男性が
「ただいるだけで目障り」と自分のことを思っていることを聞いて、シロさんは自分の境遇と重ねたり、ケンジの働く美容室の後輩の男子が彼女に冷たい態度をとっているようだけど実はそんなことなかったり。
そして相変わらずのジルベールことワタルと小日向さんカップル、そしてシロさんの買い物仲間のカヨコさんなど、それぞれの生き方と彼らとの交流が、ドラマシリーズと変わらずに描かれる。

とはいえ、やはり美味しそうな料理とその調理過程にはワクワクする。
豪華なローストビーフやアクアパッツァなどが、思ったより手軽に作れることが知れる。
リンゴのコンポートにアイスクリームを乗せて食べる…幸せを感じられる料理である。いつもより少し贅沢に、カロリーを上乗せすることで背徳感と幸福感が同時に押し寄せてくることが、シロさんとケンジの微笑ましいやり取りからよく伝わってくる。

日々のちょっとした幸せを、愛する人や親しい人たちと過ごせること。
当たり前と思ってしまいがちな大切な時間と美味しいものに改めて感謝したくなる作品だった。
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