月うさぎ

フレディ・マーキュリー:キング・オブ・クイーンの月うさぎのレビュー・感想・評価

2.5
お願い、全部は信じないで〜!!
QUEENのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの生涯を証言や写真で振り返る典型的伝記ビデオ映像。なのですが。
EMI(レコード会社)の関係者やジャーナリストやカメラマンという特定の人(たった5人だよ)の「フレディを知ってる自慢」なだけです。
これは「本当に」身近にいた人が語るものではないと思う。例えばメアリー・オースティンとか、ジョン・ディーコンとかが語っているなら、信用していいと思うけれど。

びっくり発言はエリック・ホールだ。
EMIのプロモーターで凄いやり手。
彼の手がけた事による成功という部分はあるようだし、彼のQUEENへの愛もとても強いのも事実だと伝わってきます。
しかし

Killer Queen song about me
とか言っておる。
(どうやらこのVideoだけでなくあちこちで)
フレディに募る恋心を告白されたと、そして振ったと?!
ええええ?!

フレディ自身はKiller Queenに関しては高級コールガールがモデルだと言っているし。
曲が発表されたのは1974年、メアリー・オースティンにプロポーズしたのは1973年のクリスマス。「僕はバイセクシャルだと思う」と本人が認めたのは、1976年のこと。その後、ふたりは婚約を解消したという時系列。微妙。

エリック・ホールという人。相当怪しい。
まあ、大風呂敷を広げられる人でないと芸能の世界で「やり手」になんてなれないよね。
だから話半分に聞いて下さい。
お願い、信じないで!信じたくないし。

ポール・ガンバッチーニ氏の話は悪くないです。
ご自身、ゲイであったことからフレディとはその部分で通じていることがあったようです。QUEENの他のメンバーはストレートなので、フレディのセクシャリティーについては関わらない、というか、あえて無視しようとしていた気がします。メディアの仕事をしているという以外に、ゲイ同士の世界の中で(ゲイ御用達の店とかパーティーとか)繋がりのあった人だと思われます。

普通ミュージシャンのストーリーをドキュメンタリーとして描く場合、ミュージシャン仲間の発言などが入るものですか、ブライアンがちょこっと喋るくらいで、他誰も出てきません。
EMI関係者が音楽の事を語りますが、多くはフレディがいかに独特だったかという事と彼のセクシャリティーについての話でした。

QUEENをリアルタイムで知っていた世代なので、白黒時代もバレエタイツも見ていたし、フレディがゲイ(当時はホモセクシャルと言っていた)な事も、ファンなら高校生でも知っていたし、ニジンスキー氏を敬愛していた事もよく知られていました。
(バレエダンサーでゲイとしても有名)
彼が短髪革ジャンにイメチェンした時は「ああ、カミングアウトして、そっち系(アメリカ方面のハードゲイ)に行っちゃったか!」と思ったものです。
ヴィレッジ・ピープルを代表に彼らのファッション・スタイルの情報も入っていたので、分かりやす過ぎでした。
心配したのはQUEENの他のメンバーはフレディがあれでいいのか?という事の方でしたね。
彼が全寮制学校に入っていた時から同性愛は始まっていたという話も当たり前のように広まっていたし、むしろ女の恋人がいた方が驚きだった位で。
70年代の中高生にとっては同性愛は抵抗が無いどころか歓迎されていたのですから。

そして今回も思うのは、フレディが知られたく無かったのは「本当の素顔の自分」なのだよね。死んだ後に根掘り葉掘り暴かれたくないだろうなーという事でした。
エンターテイナーとしてのフレディ・マーキュリー。
それは彼にとって何だったのか?
ペルソナ?
違う気がする。
フレディはデヴィッド・ボウイとは全然違う。
フレディ・マーキュリーとして生きることに全身全霊を捧げた人なのだと思うのです。
月うさぎ

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