けん

護られなかった者たちへのけんのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.0
監督 瀬々敬久(64、糸)
脚本 林民夫(永遠のゼロ、空飛ぶタイヤ)

1万5千人以上が亡くなった東日本大地震は、1万5千の悲しみが生み出されただけでは無く、残された人達の中には、生きること自体が困難になってしまった人達もいる。

そんなどうしようも無い理由で困難に陥ってしまった人達に手を差し伸べなければならないのは、国であり行政であるはずだ。

もちろん国や行政に、手を差し伸べる仕組みはある。だけど、それが万能なものではなく、怨みを生み出してしまい、殺人に至ってしまった事件の物語なんだ。

骨太な社会派な話を、役者陣の名演や音楽で、重厚な作品になっている。特に清原伽耶は、今後大きく成長して行くんだろうなと思わせる演技だったよ。

でも、どうしても解せないのは、福祉保険事務所の2人は、あんなに猟奇的なやり方で殺されてしまわなければならなかったんだろうか?ということだ。

もちろん、彼らがもっと人に寄り添った対応をしていれば、この事件も起きなかった。でも、日々震災直後の多くの生活困窮者への対応をしなければならない状況の中で、最低限の対応はしていたように見える。

公平に運用しなければならない彼らにとって、ジャッジの拠り所になるのは、ルールであり原理原則しかない。

しかし、原理原則のことばかりに気をとられて、目の前の人間を見殺しにする結果になってしまい、恨みを買ってしまったんだよな。

もっと福祉保険事務所の彼らが、悪意のある人間であれば、犯人の殺人動機にも共感できるんだけど、少し理不尽な犯行に見えてしまったのが残念だったなぁ。
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