maro

護られなかった者たちへのmaroのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
4.0
2021年日本公開映画で面白かった順位:66/204
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

中山七里さんの小説が原作の映画。
それは読んでいなかったので、あの予告に『64-ロクヨン』を撮った瀬々敬久監督だったから、サスペンス全開なのかと思いきや。
殺人事件はメインではなく、生活保護をテーマとしたヒューマンドラマだった。
2018年に放送されていた『健康で文化的な最低限度の生活』というテレビドラマを思い出す。

ヒューマンドラマ寄りなので、殺人事件といえども複雑な話ではない。
むしろ、勘のいい人なら、事件の犯人は途中でわかってしまうかもしれない。
でも、この映画は「犯人が誰か」はあまり重要ではない。
「犯人の動機が何か」というところがポイント。

サスペンス映画だと「動機がイマイチ……」みたいな話も世の中には多い。
その点、この映画はその動機に至る経緯が濃厚で、犯人に共感、、、してはいけないけど、気持ちがとてもよくわかる内容だ。
犯人探しが目的でないからこそ描けるものだと思った。

役所側の葛藤があるのも興味深かった。
震災で家族や友人を失くし、職も失い、生活保護受給者が急増。
不正受給をする人もいれば、"スティグマ"と呼ばれる、生活保護を受けることを恥だと感じ、必要なのに申請しない人もいる。

役所側だって、できることなら全員を助けてあげたい。
でも、限られたリソースの中で、また不正をする人もいる中で、全員が望む形を実現する難しさも垣間見える。

この映画における殺人事件はひとつの結果でしかなく、その裏にある温かくも悲しい家族の物語こそが一番観て欲しいところ。
原作者本人が「事件の犯人はわかっても、物語の犯人は読み終えた後も誰にもわからない、現時点での最高傑作です!」と言うのもうなずける(笑)
maro

maro