中山七里の高評価原作未読で鑑賞。ミステリーではなく真っ直ぐに震災と向き合ったヒューマンドラマと受けとめないではいられなかった。冒頭すぐの避難所シーンで見上げられる満点の星空に、息子夫婦と愛孫の東松島での当時の苦難が重なり、物語とは別文脈で涙があふれてしまった。
作品は生活保護についての欠陥が事件の原因として描かれ、震災以後の政治状況、社会情勢に思いを飛ばすことを余儀なくされる。やはり別文脈ながら、この現況をもたらしたものに対する憤怒に、何がアンダーコントロールだという感情が抽きだされる自分自身に動揺してしまった。
佐藤健、阿部寛は安定の演技力、毎朝の連続テレビ小説ですっかりお馴染みの清原果耶が演技賞確実の熱演。その他倍賞美津子、吉岡秀隆、瑛太など脇の全出演者手堅く、すでにアート系作品で各賞受賞の瀬々敬久監督のエンタメ系代表作の一角となるだろう誠意あふれた堂々たる一本である。
