東日本大震災と絡めた社会派ミステリー。
生活保護担当者の連続殺人事件と、震災直後に変わっていく人々の姿と2つの時系列が並行していく。
事件を追う刑事・笘篠(阿部寛)と、貧困の中で生き抜く利根泰久(佐藤健)の2人が主人公。
共に目力だけで圧倒されてしまうほどに、凄まじいオーラを放っていました。
特に笘篠の中にある苦悩は、なんとも言えない救いようのなさみたいなものを感じてつらかった。
利根のような攻撃的な行動に出ないところは、ある意味真っ当に感じてしまう反面で、そこが笘篠の生きづらさにも表現されていたのかも。
利根は利根で痛いほど気持ちがわかる。
背景を考えれば、彼の気持ち、行動がああなってしまったのも頷ける。
"全て震災のせいで変わってしまった"
とても残酷ではあるけど、それがリアルなんだと思う。
これはフィクションではあるが、真実としてありそうな感じがヒシヒシと伝わってきて、つらかった。
また、テーマのひとつである生活保護について。
私も医療従事者という立場から、複雑な想いが駆け巡ってきた。
今作で触れていた通り、あってはならないはずの不正受給があるのは確か。
対して、本当に必要な方に行き届かない難しさがある。
もちろん、行政の人間ではないので、その背景にあるシステム上の欠陥や、特殊な仕事として疲弊するところ、、、といった細かいところまでは理解出来ていない。
ただ、本作で軽くながらもその辺を追求しており、ふむふむなるほどな、と納得しました。
殺された三雲や城之内も決して悪人ではなくて、墓を直したり、どうやったら生保システムが上手くいくか原理原則を作ったりと、むしろ善人側かもって思えた。
ただ、そのあたりの判断は難しくて、今回の生活保護申請のところでは良くは映らなかったしね。
そんなこんなで、いまいちスッキリしないのがこの映画の内容ではありましたが、それでも"救いを求める側が声を上げれば手を差し伸べてくれる人がいる"という着地点に収めたのはわかりやすくて良かったです。
特に、カンちゃんを間に挟み、笘篠と利根が救われていくドラマとして見たら、かなり感動できると思います。
なんだか、演技派集めた作品で圧倒されちゃいました。
永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆、このあたりをチョイ役にしてしまう強さよ。