エニグマ

護られなかった者たちへのエニグマのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
4.2
震災から月日が流れた仙台で起こった連続殺人事件。容疑者として前科者の利根という男が逮捕される。やがて、利根の過去とそれぞれが震災で追った深い傷が露わになっていく。

ヒューマンドラマ系かと思ったら結構ミステリー系だった。ミステリー映画としての構成はかなり上質なものだったと思う。ただ、東日本大震災を扱っている現実と地続きの作品の割にセリフのリアリティが所々無いのが残念。題材が題材なだけに当時の記憶とか色々思い出して鑑賞中は割としんどかった。

劇中で主題となっていたのは被災者のアフターフォロー。震災で家族を無くし、満足な支援を受けられない人々がいるというのはノンフィクションであるということが悲しい。震災後、ニュースで仮設住宅などで苦しい生活を強いられている人々が度々報じられていたので、本作の犯人のような辛さを抱えている人がいてもおかしくは無い。震災によって人生を狂わされた人も実際にいると考えると犯人が殺害に至るまでの経緯には同情してしまった。そして最後の阿部寛と佐藤健の会話で少しではあるが救われた気がした。震災から13年経とうとしている今でも人々の傷はまだ深いと思うので、護られなかった人々が少しでも救われるように社会が変わっていくことを切に願う。

とにかく佐藤健の演技が良い。泥水に顔が浸かりながらもがくシーンや人を睨むシーンを見ると昔と比べて役者としてのレベルが格段に上がっているのを感じた。また、瑛太の悪気のないイヤらしさを纏った演技も良い。怪物の教師役同様、本当に見ていて腹が立つ。清原果耶のこいつマジかみたいな泣き顔も素晴らしかった。

調べると殆どのシーンをちゃんと宮城県で撮ってるらしい。仏壇に仙台四郎がいたりとディティールも細かい。駅前のロフトに巨大電光掲示板があったり、仙台市科学館を病院として撮ってるせいで共用スペースに動物の剥製がいっぱいあったりと地元ネタ的な部分は面白かった。
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