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明日は日本晴れの一のレビュー・感想・評価

明日は日本晴れ(1948年製作の映画)
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清水宏の戦後2作目。オールロケーション、田舎道を走るバスと乗り合わせた客たち。戦前の『有りがたうさん』とセッティングはほとんど同じ。しかし、そこではなめらかに走り続けていたバスが今回は故障してまるで動かない。動かないバスそれ自体もメタファーのように感じられるが、映画が始まった直後から乗客の中にはファレリー兄弟の映画かというくらい身体障害者が登場する。盲の按摩、片足のかつぎ屋、“オシでツンボ”の老人。ほかにも戦災孤児、徴用を逃れた女、元上官など、戦争によって等しく傷ついた人々が偶々居合わせ、立ち止まり、去っていく。運転手の水島道太郎が「戦争のことは忘れよう」と繰り返すのが反語的に胸を衝く。こんなにみんなが傷ついていて、タイトルが『明日は日本晴れ』なの感動してしまう。バスの中は狭いし、そして走らないのだし、一種の限定空間の映画なのだが、それでも山道のロングショットや峠からの風景、花を摘む女の足下のアップ、トラックの荷台に積まれた材木の上からのトラッキングショットなど撮影は素晴らしい。盲と唖の会話を車掌の三谷幸子が不思議な手話で通訳する場面すごく好きだ。片足の御庄正一の溌剌とした運動もすごい。
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