カルダモン

PIG ピッグのカルダモンのレビュー・感想・評価

PIG ピッグ(2021年製作の映画)
3.9
有名シェフであったロブは引退後に森の小屋で隠遁生活を続けていたが、ある夜に唐突にやってきた何者かに襲撃され、一緒に暮らしていた豚が盗まれてしまった。豚はトリュフを収穫するのに必要な特別な豚でロブにとっては大事なパートナーだった。

ニコラスケイジの飼ってるトリュフ豚ちゃんが盗まれた!となれば誰がどう考えたって犯人が血祭りにあげられる顛末を想像するだろうが、そんなもんじゃなかった。タイトル詐欺と言われても致し方なし!とはいえ私は大いに楽しんだ。ジンワリした。

なにしろこの映画におけるニコケイは終始くたびれ果てていて全身が汚れている。襲撃された際に負った傷も手当しないまま、血糊がベッタリついた状態で普通に犯人を追跡する。そんな状態で普通に会話し、レストランに赴き、愛していた豚ちゃんを探し回る。その姿はとても切なくグッとくる。はやく傷を消毒しろ!風呂入れ!最低限タオルで拭け!と何度も思うのだが、ボロボロの姿でいることで意思表明をしている様にも思えて、だんだんと意地でも体を洗わない彼を応援したい気持ちになっている。きっと彼にしかわからない何かがあるのだろう。血まみれの状態で予約の取れないレストランに入店するシーン最高でした。


ジャケのB級感からは想像できないくらいとっても静かな映画で、91分という尺もちょうどいい。これくらいの映画がいちばん体に馴染むなあ。相棒役のアミールを演じた人、アレックス・ウルフだったのね。観終わってから気づきました。ニコケイからトリュフを買い取る仲買人で、街を牛耳る父親に逆らえない立場なんだけど、すごく良い感じの役回りで、段々とニコケイとバディ感が生まれていく感じが好き。