空海花

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~の空海花のレビュー・感想・評価

3.8
“パントマイムの神様”マルセル・マルソーの知られざる半生。
第二次大戦が激化するフランス
アーティストを目指すマルセルは
兄や従兄弟、想いを寄せるエマとその妹らと共に、ナチに親を殺されたユダヤ人の子供たち123人の世話をしていた。
しかし1942年、ドイツ軍がフランス全土を占領する─
監督はベネズエラのヒットメイカー
ジョナタン・ヤクボウイッチ
本作で2020年ドイツ映画平和賞を受賞。

マルソーが第二次大戦中、レジスタンス活動をしていたことは海外ではよく知られているらしいが、その時のことは本人の口から語られることはなかったという。
監督は存命していた唯一の生き証人であったマルソーの従兄弟ジョルジュ・ロワンジェをパリで取材。それを基に脚本を書き上げた。

時代が時代なのもあるが、緊迫感の強い場面が想像以上に相次ぐ。
マルソーははじめは子供が苦手っぽい様子を見せるが、パントマイムで子供やその場に居る人たちの心を掴むシーンに胸を打たれる。
みんな子供ながらに一番見たくない惨劇を見てきたはず…
車から降りてくる暗い顔をした子供たちを招く姿も良かった。

手先が器用だったマルソーはパスポートの偽造もお手の物だったのも意外。
マルソーという姓の生まれ方。
アーティスト気質で、自己中心的。
争い事は嫌いでレジスタンス活動とは無縁そう。
しかし兄が捕まりそうになった時の度胸と実行力の素早さ。
才ある人の凄さだと思うし
滑らかでスピーディーな緊張感のある見せ方もまた良かった。

復讐でナチを殺すのではなく
できるだけ多くのユダヤ人の命を救うことこそが真の抵抗。
多くの悲しみに触れて、
戦うことを決めても、だからこそ
その根底には人間愛で溢れている。
しかしながらエマが見たであろう光景の残酷さを思うと、ゾッとする。

子供たちを連れた逃亡劇は息もつけないほどスリリングな展開。
しかも3回も決行したというのだからただただ驚くのみ。

主演のジェシー・アイゼンバーグは自身もユダヤ人で、母親がプロの道化師だったそう。
そんな背景も役柄に合っているし
夢追うまだ未熟な若者が、
子供たちと共に過ごすことで信念を持ち
きっとそれが豊かな天職に繋がったのだと思える、作品の中で変化していく演技がとても良かったし、
子供に向ける優しい表情が素敵だった。

静寂と沈黙のパフォーマンス。
空気感は良かったように思う。
 
1945年ドイツ·ニュルンベルグでスピーチをするパットン将軍をエド・ハリスが演じ、身が引き締まる。

"We will never forget"


2021レビュー#172
2021鑑賞No.374/劇場鑑賞#72


この前に家で、意識せずに『カフェ・ソサエティ』と『嗤う分身』を観ていたので
ジェシー・アイゼンバーグ週間☺
といっても9月の話です(笑)
最近闇雲にレビューしてたらこれ1本抜けてました😅
空海花

空海花