フィルモワ

リンダ リンダ リンダのフィルモワのレビュー・感想・評価

リンダ リンダ リンダ(2005年製作の映画)
4.5
よくある青春映画の体をなしながら、静かに反逆的なところが、さすがは山下監督だなぁと唸りました。

無理解な大人を安易に対置しないとか、モッシュする生徒の向こうに座り込んだまま傍観する生徒もきちんと写しておくとか、そういう「抜き」のセンス。何よりも、バンドの中心に韓国人留学生ソンちゃん(ペ・ドゥナ)を据えたのはお見事!

こぼれそうに大きな瞳をきょとんとさせて、言葉の不自由な国で、いっぱいの「?」を抱えたソンちゃん。たどたどしく、片言で確かめるように世界の輪郭をなぞっていく彼女の姿は、まだ大人社会の言語を覚えない、思春期のメンバー全員にも被さっていきます。

異国の曲に訳もなく泣いてしまったり、好きな人のために言葉を覚えたり、わからないのに同じ事を言っていたり…。方法論以前の自己表現の産声が、なんとも清々しいのです。らしからぬ直球ラストには監督自身迷いがあったようですが、ヌレネズミになった四人の少女はやっぱりリンダ(=beautiful)リンダ リンダ リンダでした!湯川潮音の「風来坊」も、嬉しいボーナス・トラック。