アキラナウェイ

マグノリアのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
5.0
何を隠そう(隠していない)、人生のマイベストはこちら、「マグノリア」。

劇場公開は2000年2月20日。

大学卒業を目前に控えた、当時20代前半の僕は劇場で腰を抜かしそうになった。作品が持つ圧倒的な説得力に屈服し、終盤に仕掛けられたトリッキーな展開に驚愕した。

以来、ずっとこの作品が1番。
ポール・トーマス・アンダーソンも大好きな監督の1人になった。

ロサンゼルスを舞台に、一見関係のない男女9人の24時間を描く群像劇。

13分20秒の完璧なアバンタイトル。
偶然か、必然か。
語られる奇妙な事件の数々にのっけからゾッコン。エイミー・マンが歌う"One"の最初のカウントに胸が高鳴る。

①末期癌で自宅療養中の男アール。
②財産目当てで結婚したものの、愛に目覚めたアールの妻リンダ(ジュリアン・ムーア)。
③アールの付き添いの看護師フィル(フィリップ・シーモア・ホフマン)。
④男性向け自己啓発セミナーを講演中のフランク(トム・クルーズ)。
⑤生放送の人気長寿クイズ番組の司会者ジミー。
⑥同番組の天才クイズ少年スタンリー。
⑦同番組でかつて初代優勝者だったドニー。
⑧ジミーの娘で、ドラッグ中毒のクローディア。
⑨クローディアの自宅を訪問するLAPDの警察官ジム(ジョン・C・ライリー)。

はぁぁぁぁ(溜め息)。

テンポ良く画面が切り替わり、男女9人が絶妙に繋がっていく展開が堪らない。

女性を"誘惑してねじ伏せろ"と、男性の聴衆を扇動し、自己顕示欲の塊の様なフランクを演じるトム・クルーズとか強烈。

「Suck my dick!」「Shame on you!」「Shut fuck up!」とひたすら下品な言葉を連発するリンダを演じるジュリアン・ムーアも最高。情緒不安定な女性を演じさせたら、ホントこの人は上手い。

余命僅かのアールに、実は息子がいる!?フィルがその事実に気付いた時に「ツァラトゥストラはかく語りき」が壮大に鳴り出すのとか。良く出来ている。

スタンリーとその父がテレビ局の廊下を練り歩くシーンはワンカット撮影。長回し好きには堪らない。

生放送中にトイレに行きたいのに行かせてもらえないスタンリーが毎度辛い。もう…漏れちゃったのに…「立てよ」とか言われるのは拷問かよ。

完璧な人なんていない。
誰もが心に弱さを抱えている。
どうしようもなくて、
どうしたらいいかわからなくて、
もう途方に暮れるしかなくなった時、

"それ"は起きた。

あり得ない事だけど、
あり得ない事もない。

そうしたら、不思議と空は晴れ上がり、物事はまた動き始める。

それが偶然か必然かはわからない。

やっぱり好き。
再鑑賞して、更にまた好きになった。
長尺だけど永遠に観ていられる。

因みに…。

クイズ番組のディレクター役に、ロバート・ダウニー・シニア。おおお、ロバート・ダウニー・Jr.のお父さん!!

そして同じくクイズ番組のフロアディレクター役に「アベンジャーズ 」のフィル・コールソン役でお馴染みのクラーク・グレッグ!!

…なんて発見があるから、映画って面白い。