ヤンデル

マグノリアのヤンデルのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
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・FAとEAに捧ぐ
エンドクレジットの「FAとEAに捧ぐ」が映画を読み解くカギ。
FAは歌手でありPTAの元恋人フィオナ・アップル。
彼女はステージママに若いときから働かされている。
そして父親から性的虐待を受けた経験を持つ。
テレビ収録中にトイレに行きたくなった話も実話。
クローディアの部屋の油絵もファオナが描いたもの。

EAはPTAの父親、アーネスト・アンダーソン。
勉強が出来なかった(興味を持てなかった)PTAは父親と関係が悪く、ブギーナイツで描かれたように、家を出て別の家族を作ろうとする。
ブギーナイツの撮影中に父親がガンで亡くなったことがこの映画の源泉になっている(実際に和解したかどうかは不明)。
父親は有名な声優・ナレーターであり、劇中のテレビの司会者とも重なる。
実際のEAにも若い後妻がおり、PTAが会っている。

・空から降る蛙
旧約聖書に、ユダヤ人奴隷を解放しないととんでもないことが起こるといって神が蛙を降らせる話があり、それが8章2節であることから、降水確率82%、TVスタジオのボードなどに「8-2」という数字を潜ませている。
しかしそれはPTAが「これは心の奴隷たちが解放される話」と感じたことからの後付けであり、元々シナリオでこのシーンを入れた意味は「とんでもない、どうしようもないことが起こる世の中で、運命に抗っても仕方がない、過去は変えられない、だから身を任せることで実は救われるのではないか」ということ。
これは「運命は自分の手で切り開く」といったハリウッド的メッセージへのアンチテーゼでもある。
超常現象としては各地で記録もある話だが、竜巻で巻き上げられた蛙や魚が降ってきたのではと言われている。

・銃が降ってくる?
警官が追う怪しい人影は黒人の少年の父親であり、少年が銃を拾うシーンは一瞬写っている。
少年はガソリンスタンドに銃を捨てるが、そのシーンはカットされたので、なぜ銃がガソリンスタンドにあるのかは本編だけではわからなくなってしまった。

・クローゼットから出た死体
黒人の女性が、夫から自分と子供が虐待を受けたから殺した、と自白するシーンがカットされてしまっている。
つまり、エピソードの全てで父親が子供にひどいことをしている物語になっている。

・登場人物の共通点
多くの登場人物の共通点は「愛を信じられなくなった人」。
母親を裏切る父親の愛が信じられなくなり、女性を騙すナンパ師になる男。
父親から性的暴行を受け、麻薬と行きずりの性行為に身を委ねるようになってしまう女。
父親から金のためにTVに出演させられる子供。
自分には愛があるのに、歯を矯正しないと愛されないと思い込むゲイの男。

・マグノリアの意味
PTAの生まれ育ったバレー地区にあるマグノリア大通り(Magnorias Bluebird)周辺で様々な事件が起こり、絡み合っているから。
「ブギーナイツ」の舞台もほとんどがバレー地区の周辺である。
ワーナーブラザーズのスタジオがあり、そこでは映画よりもテレビ番組の収録が多く、PTAがクイズ番組のスタッフをしていた経験がある。

・偶然のエピソード
グリーン、ベリー、フィルの話は事実だが、息子を偶然ショットガンで殺した母親の話な都市伝説の類であり、事実だったとの記録は残っていない。

・フィリップシーモアホフマン
彼の役名は「フィリップ」であり、役者として本当にどんな役でもこなすが、PTAは普段の人柄が好きなので、「演技をしないでほしい」と指示した。
そのため、マグノリア劇中でのフィリップ本人は素の時のしゃべり方や仕草に近い、優しい態度になっている。
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