ダイナ

マグノリアのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

マグノリア(1999年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

まず何といっても蛙の雨の衝撃。これほどまでに前情報なく観れて幸せだと思ったことはないくらい嬉しいサプライズ。天気の変遷についての記述はエピソードの区切りの意味だけでなく蛙の前振りの意味も持つという上手い仕掛け。

個性の強い登場人物達。目を引くのがトムクルーズ演じるナンパ講師フランクですが、他にも親を過度に拒絶するクローディアとその父親でクイズ司会者のジミー、天才クイズ少年のスタンリー、元天才クイズ少年のドニー、拳銃をなくす警官ジムetc…。個人が深掘りされていくと全員(一部が間接的に)クイズ番組を共通として関わっている点が明らかに。点と点の繋がりが見えてくる過程が本作の魅力。がしかし、思ってたよりも全員が満遍なく絡み合うわけではなく一部一部が絡むだけ。ナンパ師やクイズ少年が他の人物にどんな影響を与えるんだろうと思っていたら彼らは基本的には対父親に落ち着くという、思ったよりはコンパクトで狭い関係性でした。

蛙の雨は登場人物達を皆を幸せに導いたのでしょうか。ジミーの自殺は防がれましたが余命や家庭不和については解決しません。スタンリーと父親の確執は残ったまま。(BGMの力で打ち解けてるように見えなくもないですが正直見え辛い)ドニーの愛のはけ口は見つからず。単純なハッピーエンドであれば、ジミーの性的悪戯も誤解で家族は和解、スタンリーも父親からの愛を受け取り、ドニーの愛も着地点を見つけることでしょう。

それでは何の意味もない仕掛けだったのか。そんなことはなく一番大きい所は自殺防止。そしてジムとドニーの関係、不審者と警官の組み合わせが同じ緊急事態に見舞われることで仲間意識が少し生まれたのではないでしょうか。ガソリンスタンドでの会話も印象的で、ドニーがこうも自分の気持ちを明かすことができたのは状況が作り上げた平静さが作用しているように見えました。(拳銃発見の力業感に笑う)蛙の落下音で目覚める父親と見つめ合えたフランクも忘れずに。

彼ら彼女らは抱えていた問題がスッキリ解決したわけでなく、微妙にプラスに好転したような印象。ここでの奇跡は何もかもを解決してくれるものではなく、人々に一旦気持ちを整理する時間を与えるための装置として存在したように見えました。何もかもがバチッとハマる展開という印象は受けませんでしたが、だからこそ「やるせないリアリティ」を絶妙に漂わせており、「低確率な荒唐無稽さ」と「簡単には解決しない人生のしんどさ」がハイブリッドされている点がとても好きです。

タイトルは複数のミーニングを持つらしくなかなか面白いのでググってみてください。(適当)本作エピローグの音楽がとても好きです。そして気怠げだけども明かりが照らされていくようなエンディング曲にクローディアの笑顔が映されてとても好き。総括するとクライマックス最高。ブリーフ姿の胡散臭いトムクルーズだけでも観て良かっただろ!な傑作。風が吹けば桶屋が儲かるならぬ蛙が降ればクローディアが笑う。全ては繋がっていて我々が何と何の間にある関係をどう辿って見出すか、可能性は無限大。
ダイナ

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