とり

マグノリアのとりのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
4.5
堂々の3時間超え群像劇ですが、初めて観た時のショックというか感動というか、凄くいい映画を観たなーって気持ちにさせてもらいました。長いとは感じなかった。
公開前の予告を観た瞬間から音楽の良さに惹き付けられたんですが、音楽のイメージそのままの内容だったので二度驚き。予告のイメージがいいとそのギャップでガッカリすることが多いんですけどね。
とにかく出演者の豪華さというか、アクの強い俳優さんばかりゾロゾロと出ていて驚かされます。

トム・クルーズがナンパ教祖になりきってて、アカデミー賞の助演候補にも挙がるほどの話題性でしたね。ハリウッドスタートムがこんな役を!という驚きと、意表をつく神がかりのハマリ役だったのは確か。
ステージ上で女性の口説き方を堂々演説する姿も凄かったけど、女性記者からインタビューを受けるシーンにトムのプロ根性を見ました。あのシーンでのトムの刻々と変化する微妙な表情は本当に素晴らしい。静かで地味な分、より心にせまるものがあります。屈折した青年の難しい役を上手く表現していました。

他の俳優さんたちの演技も素敵すぎて、どっぷり不思議な世界にはまりこんでしまいました。
群像劇で大切な、登場人物への共感という点、私には結構多かったです。
そしてやっぱり音楽の力が凄く大きい。
シームレスに流れる演出なのでそれぞれのエピソードがつながってる感じがより強く思えるし、この世界に自分も落ちていくような、ある種ドラッグのような感覚(ドラッグなんて知らないけど・・)を映像化しているのがもう本当にブラボー!!!って思います。

イライラさせる演出も絶妙。イライラして登場人物の憂鬱な気分が自分にも移って心の中がもやもやで一杯になったところであのとんでもないクライマックスですよ。どうやら宗教的な解釈があるようですが、そういう難しい裏事情が理解できなくてもあの土砂降りの後にくる解放感は変わらないと思う。

どうしようもなく暗く陰鬱な気分になる映画だけど、同時に凄く救われる映画でもあると思います。観る時のタイミングによっては宝物のような作品にもなりえるんじゃないでしょうか。そこまで行かなくてもこれだけまとめ上げられた映画に出会えることもそうそうないのではと思いますね。
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