ぶみ

マグノリアのぶみのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
4.0
L.A.郊外サンフェルナンドバレーで目撃したもの。それは。

ポール・トーマス・アンダーソン監督、脚本、トム・クルーズ、フィリップ・ベイカー・ホール等の共演による群像劇。
ロサンゼルスを舞台に、男女9人等の一日を描く。
公開当時、劇場鑑賞しており、多分その時以来、二十数年ぶりの再鑑賞。
自己啓発セミナー主催者フランク・T・J・マッキーをクルーズ、人気クイズ番組の司会者ジミー・ゲイターをホール、ゲイターの娘クローディアをメローラ・ウォルターズ、ゲイターのクイズ番組に出演する天才少年スタンリー・スペクターをジェレミー・ブラックマン、クイズ番組の初代優勝者ドニー・スミスをウィリアム・H・メイシー、クイズ番組の元プロデューサー、アール・パートリッジをジェイソン・ロバーツ、アールの後妻リンダをジュリアン・ムーア、アールの看護師フィル・パルマをフィリップ・シーモア・ホフマン、ロス市警の警察官ジム・カーリングをジョン・C・ライリーが演じているほか、メリンダ・ディロン、ルイス・ガズマン等が登場。
物語は、前述のように、ロサンゼルス郊外の街、サンフェルナンド・バレーに住む男女9人を中心とした一夜の姿が描かれるのだが、公開当時、洋画はアクションに限る!との勝手な思い込みをしていた青二才だった私は、ドラマの良さがさっぱりわからず、群像劇なるスタイルの本作品に対して、約三時間延々とドラマを見せられた挙句の結末に、そのオチをやりたかったがためだけに、三時間も引っ張ったのかと感じた印象が残っており、その衝撃的な結末のみが強烈な記憶としてあり。
ただ、二十数年の時を経て、あらためて観てみると、男女9人のエピソードが、それぞれ、一本の作品としても成立できるのではないかと感じさせてくれるほどクオリティが高く、そのエピソードが絶妙に遠からず、近すぎずと絶妙にクロスしていく展開は、まさに群像劇の面白さを伝えてくれる仕上がりとなっていたことに驚くばかり。
また、クルーズが怪しげなセミナーの教祖を怪演している姿は、他作品では観ることができないものであるとともに、今振り返ると、あらためて豪華なメンバーが集結している作品であることも見逃せないポイント。
加えて、時折キャストをヌルヌルとカメラで追いながら、さりげなく長回しをしているシーンが多いのも、監督の手腕が光るところであり、観ていて気持ち良いもの。
タイトルである『マグノリア』は、舞台であるサンフェルナンド・バレーに実際にある「マグノリア大通り」からきているとのことで、その耳当たりの良い語感はセンス抜群。
最終盤に巻き起こる出来事に全てを持って行かれがちで、前述のように私もその印象しかなかったのだが、今観ると、本作品の良さを1ミリも理解していなかったことに恥ずかしい思いしかないとともに、この当時から、少し情けない役をやらせたらメイシーが天下一品であった良作。

世の中、不思議は多い。
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