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Maidan(原題)の文字のレビュー・感想・評価

Maidan(原題)(2014年製作の映画)
4.2
 初めてセルゲイ・ロズニツァの作品を観た。遡行的に言えば、ユーロマイダンを観察・記録した作品で、ヤヌコーヴィチ政権が崩壊してからわずか4ヶ月後に公開された。ロズニツァは撮影を始めた時に、このデモの行く末をどのように考えていたのだろうか。何か結実のようなものを想定して撮影をしていたのだろうか。というのも、前半と中盤以降で映し出される世界は明らかに断絶があるからだ。
 ヤヌコーヴィチ政権崩壊にまで至ったユーロマイダンも当初はそこまで大規模なデモではなかったというか、同様のデモや抗議活動は小さなものも含めると昔から頻発していた。この作品はユーロマイダンの割と早い段階から記録されているが、ロズニツァは今回のデモが長期化することを予想していたのだろうか。偶然性がどの程度介在しているのか、その辺りの感覚はいまいち掴みかねた。
 この作品はユーロマイダンに関する最低限の情報しか提示してくれないので、観る際にはある程度の予備知識が求められるように思う。その意味ではやや不親切な作品ではあるものの、ロズニツァがまさしく「マイダン」にて現在進行形で起きていたことを観察・記録することに徹した以上それは致し方のないことだろう。
 Жить - значит видеть.
 カメラはマイダンに集まる様々な人を映し出す。一人ひとりに焦点が当たる訳ではないが、マイダンの全景も見えない。動員される群衆というよりかは、個人の意思表示は少しくあったのだろうとは思うが、しかしそれでもウクライナ国家を歌う群衆の顔貌には少なからず戸惑いを覚えてしまう。群衆が声を揃えて同じことを叫ぶ。自由を叫びながら行列を組んで行進すること。非常に難しい。あるいは「尊い犠牲」について。
 途中、おそらく外務省のあたりからベールクトと反政府派の衝突を映し出すシーンがあるのだが、それは冷酷な現実であるにも関わらず、どこか対岸の火事というか、距離を感じてた。短いシーンではあったものの、「マイダン」の内外の対比が端的に示されていたように思う。
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