ただ淡々とカメラを回しつづけるだけなのに、いつの間にかひきこまれて見ていた。
ごく普通の市民が、不意に歌い出す（みんな歌が上手い）。演説を始める。石を投げる。
爆弾が炸裂し、放水銃で水が撒かれるのに、誰も逃げようとしない。「ウクライナに栄光を Слава Україні」の連呼は、どのような銃声をもってしても止めることができない。
ウクライナの国歌を真面目に聴いたのは初めてだけれど、何と勇敢で物怖じしない歌だろう。自らをコサックの末裔と誇らかに歌う彼らに、敵するものはなにもないかに見える。
コサックよりも前の、草原を疾駆した勇猛な騎馬民族スキタイの血もまた、彼らの体の中に流れているのだろう。
プーチンは敵を見くびっていたのではなかろうか。
