1950年代、米ソが先を競う宇宙開発。ソ連は「スペース・ドッグ計画」と称し、野良犬のライカをスプートニク2号で宇宙に打ち上げた。地球軌道を周回した最初の動物となった彼女の魂は、地上に降り立ち今も仲間達と共にモスクワの街角を彷徨っているという。
貴重な「宇宙犬」実験映像を織り交ぜながら、現代を生きぬく野良犬の目線でこの世界を描きだす異色のドキュメンタリー。
街に溶け込んだ犬たちの生き様、ヒトの所業の一端を見せられ、私たちは何を思うか。
●驚きの野良犬体験
作品の大部分を占める、野良犬目線の映像がすごい。至近距離かつあまりにも自然体なのでどうやって?と思っていましたが、なんと4年間も野良犬に密着していたとのこと。メイキング映像を見ても本当にただ至近距離でカメラを回しているだけでした…。
「犬の目を通して世界を描く」構想が先にあり、結果として宇宙犬ライカに辿り着いたそうです。
それだけ長い時間撮影していれば、偶然「ショッキングな場面」に出くわすこともあるだろうと納得。90分の中で見ると出来すぎていてまさか人為的に…?と疑ってしまうほど迫真なのです。
ワンちゃんがおもちゃを加えて頭を振るのって、自然界ではあーいうことなんだなと突然理解…。
●貴重な宇宙開発アーカイブ
資料を探し、所蔵機関に作品の趣旨を理解してもらうまで説得、素材を揃えるのに3年かかったそう。部分的に使われているだけですが見る価値がありました。
紛れもない動物実験ですがそれを持ち出して旧体制を批判する意図はなく、むしろそれらに対して一定の距離を保ち、第三者目線を貫こうとしているのは伝わってきました。
人間の視点(ジャッジ)を排除した描き方が、却って生命に纏わる漠然とした問いかけとして機能しているんですね。
神の見ている世界はひょっとしてこんな風なのかもしれないな。
●「タルコフスキーが監督したディズニー映画」
予告に出てきたこの一文に惹かれて見に行ったんです。コピーライティングの天才すぎでは…
水たまりとか雨とか草むらとか線路とか廃墟とか、狙ってるようにしか見えなくて…そういう意味では終始とても気持ちが良かった。
●唯一の挿入歌が好き
OPとEDでのみ使われているやけに壮大な電子音楽。鳥のさえずりがサンプリングされていたりする。
この曲と、優れた成層圏のイメージ映像のおかげで、ほとんど野良犬映像だったにも関わらず確かに大宇宙の映画を見たな〜という感覚になりました。
本編は冷静に見れていたのにエンドロールでなんだか泣けて。
でかい犬、つよい。日本には野良犬がいないのでその辺にいたらやっぱちょっと怖いかな。
監督インタビュー引用元記事
https://realsound.jp/movie/2021/06/post-802456.html
https://eiga.com/news/20210612/6/