佐藤克巳

放浪記の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

放浪記(1935年製作の映画)
5.0
木村荘十二監督は、成瀬巳喜男がPCL移籍後恵まれなかった印象を受けるが、この頃は正しくPCLのエースだった。「放浪記」と言えば成瀬、高峰の作品が定評だが、私は本作の方が好きだ。義父と実母は行商でジプシー生活を続けているが、文学少女だった小林ふさこ夏川静江はいずれ家族揃っての生活を得たいと頑張り生き抜く。夜店売子、セルロイド女工、田舎芸者、カフェ女給と転々。結婚を約束しながら裏切った男大川平八郎、夏川に惚れながら待ちきれず妻帯者になった男藤原釜足、どさ回りの人たらしの男滝沢修等、碌でも無い男との関わりに絶望し自殺。未遂に終わるが、朦朧とする中母、堤の呼び掛けに目覚めると、母からの仕送り。その有り難さに奮起を誓う。一方男連中と違って、田舎芸者英百合子、滝沢の女細川ちか子、カフェ女給の妹分堤真佐子等女は彼女を愛し頼もしかった。
佐藤克巳

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