KAJI7

窓から見える世界のKAJI7のレビュー・感想・評価

窓から見える世界(2017年製作の映画)
3.8
大切なものを失った親子の虚無と幻夢を優しくなぞった、ニュージーランドの短篇映画『窓から見える世界』(2017)を鑑賞しました。🇳🇿


昨日、三浦春馬さんが亡くなられたことに動揺を隠せず、取り返しのつかないやるせなさと喪失感に胸を引き裂かれるような心地がしています。
去年、劇場で観た『アイネクライネナハトムジーク』での、その穏やかな演技には彼の持つ奥深い人間味が滲み出ていて、本当に感動しました。
彼はきっと聡明で優しい方なのでしょう。
でも同時に、僕ら視聴者や芸能界からのそういう期待感という名の「依怙」が、彼の首を絞め続けていたのかもしれません。
心からお悔やみ申し上げます。どうか安らかに…。

さて、この作品は、妻を亡くして失意のどん底にある父親と、わずか8歳の息子「ジェス」の心の動きを、キャンピング・カーという閉鎖空間を巧みに用いて描き出します。🚗🚙

大切な人がいなくなって、外の世界が怖くなって、窓ガラスの中に閉じこもる愛に溢れた父親。
決してそれを否定せず、その小さな身体で必死に父の悲しみを癒そうとする息子。
2人の深い絶望を受け止め、傍に寄り添いそっと支えるニュー・ハーフの友人。

とても哀しい物語なのに、スーッと心が清められていく感覚を、観ていて憶えました。

昨日、僕は梅田にあるTOHOシネマの前で実施されていた「献血」に行っていたのですが、そこでの呼びかけ文句が非常に印象的だったので、その文言をもってこの文の結びと致します。




「人間の生命は、人間にしか救えません。」
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