櫻イミト

復活の櫻イミトのレビュー・感想・評価

復活(1915年製作の映画)
4.5
後に「白熱」(1949)などギャング映画で名を馳せる名匠ラオール・ウォルシュ監督(当時28歳)の長編デビュー作。スコセッシ監督に大きな影響を与えたギャング映画の始祖。ハリウッドで初めてドリー撮影を導入した一本。

孤児となった10歳のオーウェンは隣人に引き取られるが、飲んだくれの義父の元で孤独な日々を送っていた。25歳になる頃には地元ギャングのリーダーになりギャンブルと飲酒に明け暮れる毎日。そんなある日、客船で開かれた福祉パーティーを冷やかしで眺めていると、福祉士のマリーが親切に招き入れてくれる。パーティーは思わぬ大火事で大惨事となるが、そこで子供たちを一緒に助けたことでオーウェンとマリーは親しくなる。その後オーウェンは、settlement house(スラムの社会福祉施設)でマリーを手伝うようになり、お互いに惹かれあっていくのだが。。。

まさに隠れた傑作だった。「國民の創生」(1915)と同年の制作ということに驚き!※同作にはウォルシュ監督も出演

翌年にグリフィス監督は「イントレランス」(1916)で寛容と不寛容をテーマにする訳だが、あれほど大袈裟ではない本作の方がずっと心に沁みた。

導入部の少年期から、船火事のスペクタクル、クライマックスの抗争まで、映像もシナリオもメリハリのある構成で非常に良く出来ている。若き日のマーロン・ブランドを思わせるような主役、慈愛を感じさせるヒロイン、主役をフォローするせむしの友人とキャスティングもハマっていて、エキストラにスラムのギャングや浮浪者を使っているのも効いている。

日本未公開で全く知らなかった本作だが、似たような後の映画が次々と思い浮かんでくる。スコセッシ監督以外にも相当な影響を残しているのではないだろうか。

映像的にも内容的にも、映画史上に刻むべき驚きの傑作。
櫻イミト

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