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セラとチーム・スペードのSPNminacoのレビュー・感想・評価

セラとチーム・スペード(2019年製作の映画)
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これはまた凄い学園映画が出て来たぞ。学園を仕切る5つの地下組織。その中でも最強“スペーズ”を率いるセラは腹心マキシー、新入りパロマを従え、後継者育成や大学進学、親のプレッシャーなど悩ましい問題に対処するのに忙しい17歳。派閥、交渉、対立、裏切り、戦争。体制維持の重圧とストレス。昨日の友は今日の敵。学園の外に出る前に、寮生活の生徒たちは閉ざされた世界で危ういバランスをコントロールしなければ生き延びられない。「自分で決める権利を守るの。連中は奪おうとするから。17歳を壊そうとする」。
これは政治スリラー、学園版マクベスだ。マクベス夫人となったパロマは、その手を血に染めることになる。でも新参者の彼女だけは写真という武器を持っていて、そのカメラはみんなの本質を写し出すのだ。そしてサソリと亀の寓話と同じく、毒は自らも殺す。
グリーンを基調にした、褐色の若い肌を輝かせる撮影。チアリーダーの振り付け、暗闇のヘッドライト、由緒ありげな校舎と階段の構図。カメラの距離感、揺れ動く視点が不穏で、やがて起こり得る恐ろしい悲劇を予感させる。この視点はまた、姿は登場しない“亡霊”ティーラのものだとわかる。それがセラに付き纏い、彼女を追い詰めていく。青白い光に照らされた冷たいトーンは殆どホラーというか、何かが起こりそうな一歩手前の怖さがデヴィッド・ロバート・ミッチェルに似た印象で好み。こういった新しい才能が今後も新作を撮ることが出来ますように。
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