kuu

オールデイ・アンド・ア・ナイト: 終身刑となった僕のkuuのレビュー・感想・評価

3.6
『オールデイ・アンド・ア・ナイト: 終身刑となった僕』
原題All Day and a Night.
製作年2020年。上映時間121分。

ジャコールは殺人罪で終身刑の判決を受け、刑務所で服役することになった。
時間を持てあましたジャコールは自分の人生を振り返っていく米国映画。

ガキの頃、ジャコールは父ちゃん(ジェームズ)から虐待を受けていた。
母ちゃん(デロンダ)は家庭を守るべくベストを尽くしとったが、ジェームズの麻薬依存と暴力的な振る舞いは一向に改善しなかった。
デロンダは『息子には夫のようなチンピラになって欲しくない』と願い、懸命にジャコールを育てたが、その願いは叶わなかった。
成長後、ジャコールはギャングの下っ端として犯罪に手を染めるようになったんやなぁこれが。
親の思いは中々届かない。
やがて、ジャコールはシャンタイと恋に落ち、息子を授かった。
ここに至り、ジャコールは堅気の人間になると決意したが、生き方はそう簡単に変えられるものではなかった。。。

"It's crazy to want to give everything and have nothing to give."
全てを捧げたいのに何もないのはイカれてる。

今作品は、生来か環境いずれにせよ暴力の連鎖から抜け出そうとする青年を描いた、ドラマチックじゃないにしても、多くの犯罪の性ってのを巧く描いていると思う。
冒頭のナレーションは、
『Same fuckin' story on repeat』
って溜め息をつき、まるでこの作品が自ら予測の可能性を刑務所産業複合体のせいにしようとしているかのよう。
今作品は、過酷な人生の現実に屈することもなきゃ、司法の不正に巻き込まれた、ゲームに勝った善良な子供の、ある種の気分の良い救済策に甘んじることもなかった。
回りにグレーが沢山いたから思うに(今、小生はきっぱり過去の多くの友たちに伝えず町を出た)、人が持つ社会への回復力と偽りの希望てのは紙一重やと云える。
自分自身に躓きながらも、目的を持ってそれを守って行く。
難しい。
慎ましやかながら小生が歩めてるのは、過去に暮らした町やら生来の何かが助けてくれてるんやし、皮肉と云うよりも不確かで人生はわからんなぁ。
ちょっとお古い物語に新たな命を吹き込むことに成功してる作品と思いました。
作中、主人公の彼が行った最も過激な選択は、冒頭にあって、問題を抱えた主人公を人間らしくすることを否定して、その責任を主人公に負わせるちゅう、この種の映画に抱く最も基本的な前提を即座に覆す残酷なシークエンスで幕を開けして驚いた。
映画『ムーンライト』でブレイクしたアシュトン・サンダースが、これまた強烈なインパクトを与える演技をみせてました。
この世が正しい者に幸せを、悪い者に不幸を与えるなら、どれだけシンプルで良かったのかという話やけど、そうなっていない。
ほんと、この映画は便利な救いがないねんなぁ。
故に考えさせられる。
正義のヒーロー無きリアルな世界で生きるしかない人間たちの苦悩が充満してた。
アフリカン・アメリカン(黒人)、貧困と、そこからくるガラの悪い(治安の悪い)地域出身ちゅう、三重の枷によって上手くいかない人生を送るジャコールやけど、これらはどれも彼のせいじゃない所がまた皮肉が効いてるしビターで切ない。
かといって、悪いことを一切してこなかった友人ですら上手くいかない人生を送っており、肌の色が違うというだけで世間から受ける冷遇は小生個人もガキの頃にイヤってほど経験したし、いたたまれんかな。
人種差別の闇は根深い(日本でも米国ほど露骨じゃないにしてもある)ってのを多くの人に知ってもらえる作品じゃないかな。
2時間という長い時間をかけて作られた今作品は、時としていくつかの異なる映画が一緒になっているように感じられる作品でした。
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