Hiroki

TITANE/チタンのHirokiのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.5
2021カンヌのパルムドール作品。
普通ならウキウキで映画館に向かうところ今回は不安要素が2つ。
まずは昨年のカンヌでの批評家の評価が軒並み低かった事。
詳しくは下記noteに書いてありますが、

https://note.com/marry_e_n_t/n/na4293cfac084

カンヌの『スクリーン』や『カイユ・デュ・シネマ』などの星取り表(批評家が星の数で評価して平均値がサイトで見れる)では、濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』/アピチャッポン・ウィーラセタクン 『メモリア』/レオス・カラックス『アネット』が軒並み高評価で、今作品はかなり評価が低かった。下から数えた方が早いような。
しかし結果は今作がパルムドール。
もちろん審査するのは審査員で批評家ではないのでそーいうこともあり得るのですが、ここがまず引っかかっていた点。

そしてもう一つは単純に元々クリエイターのジュリア・デュクルノーがあまり好みではない所。
もちろん前作『RAW〜少女の目覚め〜』が長編デビューで1作品しか観れていないのに見切るのが早いのはわかってるのですが…

そんなこんなで観賞してエンドロールが終わり感じたのは「この人は完全に他人に理解してもらう気がないな」という事。
これってすごく難しくて、それはとても良い方向にベクトルが向く場合とその逆の場合の両方があると思うから。
たぶん世の中の多くの人が「わけわかんねーなー」って思う映画ってたくさんあって、今作もその中のひとつ。それが全然悪い事だとは思わない。
ただ“やりたい事(プロット/手段/方法)が理解できない”のは良いんだけれど、“何でそれをやりたいのかが理解できない”のは個人的には厳しいと思っている。メッセージやもっと単純な衝動のような。
“幼少期に頭にチタンを埋め込まれてそれにどんどん飲み込まれていってしまうイメージ”=“性別とか人種とかもはや人間からの解脱”みたいなやりたい事は理解できるけど、何のためにそれをやりたいのかが全然伝わってこなかった。きっともっともっと先にあるイメージの世界に私を連れていってはくれなかった。
私の読解力不足で、他の人のレビューや考察を見れば「こーいう事がメッセージとしてあったのか」とわかるかもしれない。
でもそれだと意味がない気がする。

逆にこないだ観賞した同じ2021カンヌの監督賞『アネット』も「わけがわからない」映画なんだけど、でもレオス・カラックスのやりたい事、伝えたい事がビッシビシに伝わってきた。
彼の抱く愛みたいな熱量があれはすごい伝わってきたんだよなー。個人的にレオス・カラックス作品て別に好きじゃないんだけど、でもあの作品からはそれは凄く感じる事ができたんですよ。
レオスが前に話していた「映画を作るという事は自分が誰であるかという事よりも、自分が何を疑問に思っているのか?何を恐れているのか?という事を反映したもの。」という言葉が思い起こされる。

あとはちょっと性的な表現多すぎやしないかという…あのストーリーの構造的に仕方がないのはわかるんだけど…

もー若い時、その瞬間にしか撮れないような攻撃的なヒリヒリするような映像とか、良い所ももちろんありました。
これ何かなーって考えると“学生の卒業制作”を観てるみたいな感覚がしたんですよねー。
学生の卒業制作って観てると凄く面白くて、基本的に商業用に作ってないからどこまでいっても自己満足な作品が多い。それは自己を他者から完全に切り離していて、自己の増幅で作品をグイグイ引っ張り上げるみたいな。だから本当にエネルギーが途方もない。
でもそれは勉強だから許される事で、仕事にする、商業映画を撮るって事は全然意味合いが違うのではないか。
もちろん観客やスポンサーに媚びまくってる映画もイヤだけどねー。
そこのバランスでクリエイターたちは日々戦っているのだろうなーとか考えたり。

個人的には全然ハマらなかったんだけど、不思議と全然イヤではなかった。
みんなはどー感じたのかなーと久しぶりに他の人の意見やレビューが凄く気になった作品でした。

2022-37
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