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TITANE/チタンのmsyのネタバレレビュー・内容・結末

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

RAWが良かったから観ようと思って
軽い気持ちで劇場へ行き、
ボディピアスに髪の毛が絡まる件で、
この監督の痛みの描き方を思い出し
座り直しました…痛たぁ…

とはいえ、だいたいが
瞬間的、突発的な加害なので
カラッと観られるのがいいところ!
RAWもそんな感じだったから
あまり引きずらなかったと思う。

壮大な音をいかにも深刻に使うのだけど
ちょっと笑ってしまう感じも
RAWと似てた。

かと思えばあの2人が心通わせる場面で
マカレナを歌わせたり
予告編でも流れてたzombiesのShe's Not Thereが
エモエモのエモ…

音楽の使い方が素晴らしいです、
デュクルノー監督。

巧みに気持ちを高揚させてくれつつも
登場人物の自認と一般的な認識の乖離が描かれ
ずっとしんどい。
ここは容赦なかったです。

アレクシアの両親は恐らく
我が子を可愛いと思えなかった。
夫婦が愛を育み誕生した子は
一般的な「子ども」とかけ離れていた。
大人になっても実家に住まわせてたのは
世間に放つ方が心配だったのか…
挙句娘にあんな目に遭わされる。

ヴィンセントは老いていく自分の体に抗い
ステロイド注射を打ち続けてる。
失った息子の幻から逃げられない。
元妻は彼を案じてはいるものの見放した。

これらが特に説明なく
不穏な出来事として繰り広げられる。
なので暗喩に特化した閉じた映画かと思いきや
意外にそうではなく
アレクシアの体の変化がクライマックスへの
タイマーとして機能する親切設計。

ヴィンセントの部下たちが健全なのも
ホッとさせてくれる。
(アレクシアが消防車の上で踊り始めた時
みんなドン引きしてたので、そうそう、
これが普通の反応ですよねと安心する)

前半のしんどさはだんだん緩んできて
あの2人の関係に尊さが生まれ
最後まで惹きつけられる、
そしてまさか泣かされる羽目になるとは…

新しい命の人生にも
安堵の場所を見つけられるように願う…
世間的には異常であっても
アレクシアとヴィンセントのように。
見つけられるに違いないと思える。

主演のアガト・ルセルの体当たり演技は凄まじく、
感動を呼ぶが、心身共に
ダメージを負っていないか心配にはなる。
そこは監督を信じたい。
msy

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