ぶみ

TITANE/チタンのぶみのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.5
壊して、生まれる。

ジュリア・デュクルノー監督、脚本、アガト・ルセル主演によるフランス製作のボディ・ホラー。
幼い頃の交通事故により、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれている主人公の姿を描く。
主人公となる女性アレクシアをルセル、中盤で彼女と出会う消防士ヴァンサンをヴァンサン・ランドンが演じているほか、ギャランス・マリリエ、ライ・サラメ等が登場。
物語は、前半ではショーダンサーとして働くアレクシアが、クルマに対して異常な執着心を抱く様子が描かれ、中盤以降は、ひょんなことからヴァンサンと暮らす展開となるのだが、何はともあれ、アレクシアのキャラクターが強烈で、妖艶な姿を見せたかと思えば、バイオレンスに転じてみたりと、とにかく、目を背けたくなるようなシーンのオンパレードで、次は何をしでかすのかわからない危険な魅力を放っている。
また、ヴァンサンが登場してからの物語は、前半とは別モノと言っても過言ではなく、アレクシアの体の異変と、身分を偽って生活するというドキドキ感のダブル攻撃に終始耐えることとなり、これまた、どこを見ていたら良いのか、わからなくなる展開に。
特に、前半ではアレクシアの艶やかさに目を奪われていたのが、後半では、単に体という物体にしか見えてこなくなるという対比には驚くばかり。
アレクシアは、前述のように、クルマに対して異常な感情を持っているのだが、考えてみれば、「愛冷蔵庫」や「愛テレビ」「愛スマホ」とは言わないのに対し、クルマに対しては普通に「愛車」というフレーズを使うため、私も含め、クルマに単なる道具以上の感情を抱いている人が多いのも事実であり、その最終形態がアレクシアかと思うと、何だか憎めないもの。
アレクシアの表面的な異常性だけがクローズアップされ、その背景があまり語られないのは説明不足だと感じたものの、何気に長回しがあったり、時折、空気感が緩くなったりと、見どころは少なくなく、色々な意味で振り切れている怪作。

何人いるのよ。
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