すごい…
車×女の極彩色フレンチホラー……からのまさかの偽装親子愛ものに。
事故で頭にチタンプレートを仕込むことになった女性アレクシアが、モーターショーのショーガールをしており、その帰りに車自体からモーションをかけられる。
その後、アレクシアは性器から黒いオイルのようなものが漏れ、後に妊娠。
それだけでもかなり異質なホラー映画になったはずだが、本作ではその車への衝動からアレクシアが連続殺人を行なっているという特性も持っており、因果関係が理解不能だが飽きさせない。
妊娠中の女性が15年失踪していた男児を装って父親を騙し…というあまりに独創的なストーリーがかつての手塚漫画かと思うほど突飛に感じられるが、それを軽薄にさせない役者たちの血の通った演技力がある。
父親は偽りの息子への執着をまるだしにしており、ときにそれは過保護なほどだが、アレクシアもその愛情を真正面から受け止めている。
父親はまったく口をきかない息子におそらくほのかな疑念めいたものは感じているんだろうが、意図的に無視している節がある。
アレクシアのお腹はもうサラシでは隠せない状態までになるが、その中ではチタン性の"何かの塊"が今まさに産まれようとしていた。
父親の異常な妄想の庇護と、それを隠れ蓑にしながら金属の魔物をはらむ異次元の恐怖。
そして圧倒的に洗練されたビジュアルがすばらしかった。
