持て余す

オールド・ガードの持て余すのレビュー・感想・評価

オールド・ガード(2020年製作の映画)
3.4
グラフィックノベル原作のスタイリッシュNetflix映画。

グラフィックノベルっていうのは大きな意味で言えば漫画やコミックと同じようだけど、定義の定まらない──こういう場合はたいてい商業的に新しさをアピールしたい時の括りなので、曖昧になってしまうことが多い。一般的なアメコミよりも大人向けでシリアスな内容のものが多いようだけど、アメリカとヨーロッパで捉え方が違うとか、日本の漫画はどうだとかで……つまりは漫画には違いないということぐらいで定義がゆるい。

さて、その内容だけどそれほど斬新ではなくて、不死ではないものの治癒能力が高くてとても長く生きられる人たちが、歴史的な事件や戦争が起きた際に戦闘員として長いこと人間を手助けしてきた。この能力を悪徳製薬会社のCEOが知り、実験動物として、彼らを狙い始めたのだが……という画期的とは言えないが、おもしろそうなお話。

日本の漫画だと悪徳製薬会社のCEOではなく、同じような能力を持ったダークサイドとの戦争になる方が一般的かな。悪徳製薬会社のCEOが登場したにしても悪の能力者たちに会社ごと乗っ取られるような展開になりそう。

日本のいわゆるバトル漫画と比べてアメリカのヒーローたちって、一般人よりは強いけれど常軌を逸した強さではないことが多い(いないわけでない)から、武装した人間と対立したらそこそこ苦戦したりする。まあ、この物語の超人たちは丈夫で長持ちなだけで、運動能力が高いわけではないから当たり前と言えば当たり前か。

まあ、バトルに関してはスタイリッシュでなかなか興奮したし、(ほぼ)不死身だからこそのアクションの感じで、良かったと思う。

ただ、割と大人っぽい(グラフィックノベルの定義のひとつだ)雰囲気を出しているのだけど、全体に設定が緩いせいでいまひとつ乗り切れないところがある。この超人たちはこれまでに多くの「人間たちの」戦いに身を投じて、「正義の側」に立って協力してきたということなのだけど、戦争だの紛争で終戦より前にどちらかが「正しい」と決められるなんてことあるのかな?

例えば、旧ドイツや大日本帝国がしたことは「悪」なのは、負けたらから決められたことで、勝ち続けたらそれが正義の側になってしまわないかと思う。「正義」だ「悪」だなんてものは、その程度の不安定なものだ。だから、彼らがどんな根拠でどちら側に立って戦っていたかは割と重要な話なのに、そこに踏み込まない。

超人だからといって、その善悪を勝手に判断しているのだとしたら、そんな不遜な話はない。

エンターテイメントの映画とは言え、その辺りはもはやおざなりにしていいところでないと思う。前の大戦から随分と時が経って、先進諸国が安易にナショナリズムを政治利用し始めている昨今では、戦争の「正義」について悩まないのは怖い。そんなのは正義のヒーローじゃなくて、ただの傭兵だ。

……という不満はあるけれど、丈夫な超人たちの造形はなかなか良くて、見ている間は快適。シャーリーズ・セロン超カッコいいし、役と同じく不老に見える。よくできたNetflix映画でした。
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