よーだ育休中

トランスフォーマー/ビースト覚醒のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

3.5
惑星を食らう邪神ユニクロンによる宇宙支配を阻むため、マクシマルの長は《トランスワープ・キー》を先史時代の地球に隠し、ユニクロンは暗黒の力を分け与えた配下テラーコンに鍵の捜索を命じた。1994年のニューヨーク、博物館のインターンが出自不明の鳥像を独自に調査していると、像に隠されていた鍵を誤って起動させてしまう。


◆ 脱マンネリを果たしたトランスフォーマー

大人気SFアクション映画『トランスフォーマー』シリーズの七作目。長らく監督を務めてきたMichael Bayがプロデュースに回って製作された二作目の作品。前作でオートボットの戦士『バンブルビー』を主人公に据えて製作されたスピンオフ作品の流れを汲む作品ですが、今作ではTravis Knight監督に代わり、若手のSteven Caple Jr.監督がメガホンを取っています。

前作で描かれていた『キングコング』や『T2』の様なエッセンスを含んだ少女とマシンの心温まる感動エピソードに、M.Bay感の抜けた新しいトランスフォーマー・ムービーの可能性を垣間見ることができました。

今作では、前作『バンブルビー』以上に迫力のあるアクションシーンが多く追加されています。ワンパターンなアクションの使い回しは無く、きちんとドラマ性を持ったストーリーが展開していく上で要所要所にアクションシーンが差し込まれていました。爆発シーンやクラッシュシーンのスペクタクルはさすがに大御所M.Bayには及ばないものの《M.Bay節が強すぎる印象が拭えない『トランスフォーマー』シリーズ》の中で差別化された今作は稀有であり新鮮味があります。

M.Bay監督の世界線では、第二次世界大戦の時点でオートボットは地球の至る所に出現していたという記録が残されていました。今作の舞台は1994年。オートボットたちが「地球に七年居る」と話していたことから、前作でバンブルビーが地球に降り立った1987年と整合します。

加えて、M.Bay監督版では《地球がユニクロンだった》のに対して、今作では《ユニクロンが地球を狙う》ストーリーになっていました。今作ではベイラインと異なる世界線が描かれていることは決定的といえるでしょう。


◆ ふんだんな小ネタが楽しい

従来作品ではオートボットとディセプティコンの対立という構図が主でしたが、今作では新たに善の勢力《マクシマル》と、悪の勢力《テラーコン》が登場します。1997年に放送されたTVアニメ『ビーストウォーズ』を幼い頃に観ていた世代なので、コンボイ(オプティマス・プライマル)やライノックスの登場にワクワクしました。彼らの毛皮や皮膚のようなテクスチャーを持った金属生命体のデザインは好ましいです。

テラーコンはディセプティコンとほぼ一緒というイメージでしたが、小型のマシンを使役して人間を追い詰めるシーンは印象的でした。M.Bay番でも同様に小型の敵性マシンが登場する場面はありましたが、今作のような『ジュラシック・パーク』に登場したラプトルのようにハラハラと緊迫したシーンの演出には使用されていませんでした。

テラーコンのリーダーであるスカージは、S.Spielbergが監督した『激突!』に登場したトレーラーと同じピータービルド社製のトレーラーに変形します。彼のフロントグリルにはかつて仕留めた獲物のエンブレムが禍々しく飾り付けてありますが、これも『激突!』のトレーラーのフロントバンパーに今まで仕留めた獲物のナンバープレートが掲示されていることと酷似しています。

今作で人間サイドの主人公Noahを演じたAnthony Ramosはミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』でドミニカ系移民の主人公に抜擢されていました。

今作ではプエルトリコ系移民という設定で、彼の住居の雰囲気は『ウエストサイド・ストーリー』のヒロインが暮らすアパートに似ていました。物語の中で『E.T.』『インディ・ジョーンズ』といった台詞も出てきており、今作で製作総指揮を外れた巨匠へのリスペクトが感じられる粋な演出に溢れていたように思います。