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ジョン・ウィック:コンセクエンスのpenのレビュー・感想・評価

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3作目の時点でアクションパートも飽和状態になりつつあるような予感がしていたが、杞憂だったようだ。
特に本作は階段を多用した上下構造のアクションが取り入れられ、ますます活気づいている。階段が無いならカメラを動かせば良いと思ったのか、真上から撮った銃撃戦も素晴らしい(ゲームが影響元らしい)。
このシリーズのアクションは止まって戦うよりも移動しながら戦うのが印象的だが、悠々と前作までのアクションを更新してしまった感がある。
勢いの中でぬけぬけとヌンチャクを取り出してジョンに使わせてしまう茶目っ気も忘れていないようだ。あれは完全な趣味だろう。

今回も様々な地域で戦いが繰り広げられるが、印象に残ったのは季節感の無さである。大阪では桜が舞い、ニューヨーク(で良いのかな)は雪が積もる。ベルリンは踊ってる人が薄着だし、夏なんだろうか。ともかく世界各国の時期がよく分からない(国によって季節の移り変わりが違うというのは分かるが)。だがそういった時季のリアリティよりもまずは画が何より重要で、桜や雪などはカッコいい映像を撮る為の背景美術として存在している。
そういう意味で舞台を見ているような感覚さえあった(舞台だって演目によっては季節はちゃんと設定されているが)。

もうジョン・ウィック自体は死に場所を求めて彷徨っているような状態で、正直彼個人のドラマらしいドラマは作りようが無い(生きる理由となるような新しい人物をわざわざ作る気も無かったと思う)。そこで周囲に犬が相棒のノーバディ、旧友で先立たれた妻を想い娘を遠くから見守るケインを配置したのは良かった。
ノーバディとはあまり絡まないが犬という共通項が情緒的な場面を一瞬作り出しているし、もう一人のジョン・ウィックのようなケインの存在が、ストーリーを牽引しているといっていい。
そこにシマヅ親子を加え、人間関係をより捻じれさせている。

ドニーイェン、真田広之、そして人によってはスコット・アドキンスとアクション映画関係には堪らない人々をキャスティングし、集団アクションを贅沢に展開した本作は、現時点において最高のアクション映画を作ろうとしている製作チームの強い熱意が形となって現れた映画となっている。

ところでキアヌ・リーヴスは「カウボーイビバップ」の実写化企画によほど未練があったのだろうか(映画を観れば何となく意味が分かる)。
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