くるぶし

ただ悪より救いたまえのくるぶしのレビュー・感想・評価

ただ悪より救いたまえ(2019年製作の映画)
3.7
引退したかった殺し屋と復讐に燃えるヤクザが国を越えて交戦する壮絶な追いかけっこが、麻薬組織と警察の癒着や、人身売買・臓器売買など裏社会の背景を織り交ぜながら描かれるバイオレンス・アクション。

1本の映画としての完成度うんぬんより(ここ大事)、この映画はいかに韓国の二大セクシーアジョシであるファン・ジョンミンとイ・ジョンジェの対決を楽しめるか!それがはじまりでありすべてです。

インナムとイレ、同じ裏社会で生きるもの同士が、命果てるまで硬骨に信念を貫きとおす。それはどこか狂った愛の交換にも見え、胸がキュッと締め付けられる。

ド派手なアクションや鬼畜の所業にばかり意識が飛んでしまうけれど、韓国ノワールにおける男同士の悲哀がすべてを物語るストーリー、やはり大好物だな、と。

撮影は日本、韓国、バンコクで、役者にとっては負担の大きいスタントなしのマルチカメラでワンテイクが基本だったとか恐れ入る。特にバンコク市街地の抗争シーンは、あの規模の銃撃戦と爆破をワンテイクでとかほんとに?
頭おかしいとしかいえません。


ーーーーーー ネタバレ↓↓ ーーーーーーー





で、問題は映画好きならだれもが気づくであろう名作「レオン」との共通点。
手榴弾のあたりから、「この展開はレオンですね!」と気づいてしまうわけですが、ユイちゃんと少女がパナマの海でたわむれている姿が映し出されたとき、個人的には決してハッピーエンドではないラストだなと思いました。
韓国人のトランスジェンダーと少女、二人の異国での生活は想像以上に厳しいはず。。。

と、ストーリーはだいぶ緩いですが見どころは本当に有り余るほどたくさんある作品です。

手を広げる娘を振るえながら抱きしめるインナムには泣かされたし、どこにでもアイスコーヒー片手にぬるっとあらわれるイレの魔性さにシビれる。

残忍な殺戮シーンや過激な暴力描写をぼやかしたり元から排除してしまう日本の現状と比べると、韓国はこのまま突き進んでほしい。

あと原題「다만 악에서 구하소서」をそのまま翻訳した邦題がとてもいい。今後も、無理に改悪せずにママ流用でお願いします。
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