QTaka

atmosphereのQTakaのレビュー・感想・評価

atmosphere(2017年製作の映画)
3.5
「『逢いたかった』って言われた気がして」
想いを伝えるのは、言葉ばかりでは無い。
二人を繋ぐのは、言葉だけじゃない。
.
会話が互いを結びつける事もある。
でも、言葉にならない想いも有る。
互いに、隣り合っている時には、互いの姿を見てはいない。
むしろ、自分のことで精いっぱいなのかもしれない。
離れた時、言葉とは別の物に”その姿”を見た時。
互いの姿に気付くのかもしれない。
送られてきた染め物を見て、彼が受けとめた声。
想いは通じるものなのだということか?
.
”空気”のように当たり前に居てくれる存在。
それは、失うと窒息してしまうほど苦しい存在なのかもしれない。
そういうこと?”atmosphere”.
.
女性の心の動きを抑制の効いた表現の中に見る。
白くハレーション気味の映像が、現実にベールをかけるようだった。
日常の中で感じる不安と戸惑いをこんなふうに表現するのか。
でも、この映画が白黒だったらどうだっただろう?
洋館の前の夜桜のシーン
この飛び抜けて美しい場面を除いて、モノクロームで表現したら…
その白飛びの表現は、何か意味があるのだろう。
(それを特定できなかったけど)
その場面を白黒で見せられたらどうだっただろう。
(フェリーニのように)
なんて事も考えてみた。
.
同時期に撮られた『水面は遥か遠く』に、本作の主演の篠田光里さんが同じような役柄ででている。
同時に見ることが出来たのだが、この篠田さんの微妙な表情で表現する心の動きがイイ。
求めすぎず、一方で多くを受け入れすぎる。
そんな受け身の女性の姿を、控えめな行動と、微妙な表情で現す。
このバランスの取り方がイイ。
人を表すのに、こうして表情を捉えるのは簡単じゃないと想う。
一方で、その背景である、日常風景や会話をどう表現するのかが重要なのかもしれない。
映画の中の光の表現はそういうことだったのかもしれない。
その効果が、篠田さんの表情を印象づけてくれたのかもしれない。
.
こうして、一人の監督の、いくつかの作品をまとめて見られるのも、配信サービスのお陰だ。
最近、このコロナ禍の対応策として数々の配信サービスが立ち上がったけど、結局のところ、何本の作品を並べるかではなく、いかに作品群に意味を持たせるかと言う事になると思う。
一人の監督を追うのも良いし、ある時期の同世代の監督達を並べるのもイイ。
あるいは、特定の映画祭を取り上げるのも。
いずれにしてもキュレーション次第ということになる。
今回は、青山シアターの配信サービスで、石橋夕帆監督の作品群を見た。
そんな機会をこうして得られた事に感謝だ。
その機会は、本作の主役、篠田光里さんを発見する機会にもなったし、さらに篠田さんの別の作品(「尊く厳かな死」中川駿監督)を見る機会にも繋がった。
残念なのは、このサービスが2020年6月で終了してしまう事だ。
この独特なキュレーションをどこか別のサービスが引き継いでくれると良いのだが。
QTaka

QTaka