タイレンジャー

ザ・ファイブ・ブラッズのタイレンジャーのレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
3.0
4人の爺さん(と1人の息子)の珍道中は中盤である事故が発生して以降、何とも殺伐とした血みどろ展開に突入します。この転調が前半とはチグハグな印象になってしまったのは総合的に見て残念だったなーと。

爺さんたちがベトナムに「置き忘れたもの」を取り戻すことで、どこか壊れてしまった心を修復する物語だと思っていたのですが、違ったようです。彼らが招いたものは「分断」だったからです。

戦死した仲間の存在によって団結したはずの彼らが破滅的な展開に陥ってしまうんですよね。これはもうトランプ政権下で国内のあらゆる「分断」が根深くなってしまったことの象徴のように思えます。黒人同士であってもそれぞれの主義・信条は異なり、一枚岩になるのが難しい現状を描いているのではないでしょーか。

爺さんたちの目的は、①仲間の慰霊、②紛失した金塊の回収、という二重性の強いものであって、カネに目がくらんだ者たちが自滅の道を辿ることもまた象徴的ですね。

これはやはり作り手のメッセージが最重要であって、そのぶん物語としてのカタルシスが犠牲になっているわけです。黒人とそのほか米国民を扇動し続けるスパイク・リーの主張は分かりますが、同時にその暑苦しさが作品の娯楽性を損ねてしまったと考えます。

前作『ブラック・クランズマン』の時も思いましたが、主張と創作のバランスがもう少し良くなれば・・・。ちょっと主張が直接的すぎるんですよね。スパイク・リーの暑苦しさとは、これが主な要因かと思われます。

主人公が爺さんたちなだけに、暑苦爺(あつくるじい)映画ですね。