父母ともに癌

ザ・ファイブ・ブラッズの父母ともに癌のレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
3.5
黒人ベトナム帰還兵の4人が、戦争の時に埋めた金塊を取りに現代ベトナムの奥地へと旅する話。

スパイクリー監督の映画は絶対に思想的で逆に安心するところがある。
ネットフリックスの製作方針いいなあ、と思う。

悪い意味ではなくマイナスの感情になる場面の多さにびっくりする。
船に乗っていると現地の物売りが鶏を売りつけようとしてきて、それを一人の帰還兵が断るけど物売りがすごくしつこくて口論になって…みたいな場面、特に何も起こっていないんだけど、もう観ている側の心的ストレスがすごい。
中盤以降、ずっと地雷を意識せざるを得なくなるけど、あれもつらい。登場人物が動くたびに地雷におびえなければならない。安心ができない。
そんなところでそんな風にケガをしたらおしまいじゃないか、とか、そんなに重たい荷物を持ってどうしたらいいんだ、とか、絶望的な気持ちになる場面があまりに多く、見終わるとずいぶんと疲れてしまった。

アメリカは戦争が文化に組み込まれている国だと思う。
ベトナム戦争は徴兵制で、そのあとも徴兵制ではないにしろ、いくつかの戦争を経験しているから、戦争に対する感覚が日本人とは少し違うのだろう。
でも、少しその戦争に近い国に生きている感じ、がちょっとわかった気になる映画だった。

回想シーンの演出とか、写真で現実世界とリンクさせる感じが話の精神的な部分をかなりわかりやすくさせていた。

見終わった後にどっと疲れたけれど、まあ、それでいいんじゃないかな。この映画は、と思ったりした。
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