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健康でさえあればのtkykのレビュー・感想・評価

健康でさえあれば(1966年製作の映画)
4.9
オムニバス形式の作品ではあるが「映画とは何か」という問に対する一種の正解であるように思う傑作だった。どの話も演出、演技、脚本、編集、カメラワークのどれを取っても作品の魅力に直結する要素であり、何一つ無駄が無かった。

どの話も面白かったが特に2つ目の「シネマトグラフ」と3つ目の「健康でさえあれば」は現代社会や資本主義を皮肉る様な話だったのが印象的だった。
言ってしまえば「そんな訳あるかい!」と思うようなネタ連発のコメディであるが、それでも現代社会のとある側面を誇張したものなので「下手したら本当に有り得るかも」と思わせる。しかも本作は50年以上前の作品であるにも関わらず現代に通じる部分があり、現代社会はその当時以上に本作の世界観に近づいているのかもしれないと思うと微かに恐ろしささえ感じた。

内容もさることながら画面や音の使い方も非常に映画的なクオリティの高さを感じた。1つ目の「不眠症」では現実と小説世界を画面の色彩で区別した上で小説世界の青白いネガ画面は印象的だった。
「健康でさえあれば」では冒頭から大仰な工事音が流れ、その後も背後でその工事音が流れ、異様な存在感があった。

そして何よりもピエール・エテックスの演技はまさにコメディアンと思わせる達者さで、殆ど台詞が無くても伝わる程だった。

映像と音声両方を駆使して観客を楽しませるという映画の本質を体現した傑作だった。
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