カタパルトスープレックス

Land of Milk and Honey(英題)のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

Land of Milk and Honey(英題)(1971年製作の映画)
2.8
ピエール・エテックスの映画人としてのキャリアに終止符を打った問題作です。英語タイトル"A Land of Milk and Honey"とは「豊かな土地」と言う意味で、フランスを指しているアイロニーを含んだジョークです。クライテリオンのBDボックスセットに収録されています。

『大恋愛』でフローレンス役を演じたアニー・フレティリーニは歌手としてフランス国内をツアーしていました。そのツアーに連れ添ってフランス国内の様々な場所で撮影をしたピエール・エテックス。それをドキュメンタリーのフォーマットを使ったコメディー作品として仕上げました。海岸、ツール・ド・フランス、音楽パフォーマンスなど様々な映像を収めたフィルムは膨大な量となったそうです。

普通のコメディーの作り方はきちんとしたシナリオ作りからはじまります。いきなり撮影からははじまりません。しかし、本作はピエール・エテックスが興味本位で撮影した映像とインタビューのみ。これを八ヶ月かけて編集してコメディーに仕上げました。出来上がった作品を見た人たちは「風刺が効いたコメディー」としては受け取らなかったそうです。むしろ「自分を映し出す醜い鏡」として大変憤慨したそうです。

ボク自身もこれがまさかコメディーとは思いませんでしたよ!まあ、いろんな皮肉は効いているなと思いましたが。今のボクらが観ると、当時のフランスの風俗史として面白いです。ピエール・エテックスにとって最も重要な作品だそうですが、まだ時代は彼について行けていないですね。少なくともこの作品に関しては。

この映画は10日間だけ上映されて、その後は二十年間封印されたそうです。この映画の失敗の後、どんなにシナリオを書いてもどこでも相手にされなくなってしまったそうです。ピエール・エテックスはこの作品の後は活動の場をテレビに移しました。