幻のブルーフィルム『風立ちぬ』は伝説と言っていい。その監督の物語というのならば、期待してしまうのは当然である。
イメージ的に表現された法廷シーンは見事である。撮影中に釣り人がやってきてしまうなど、「いかにもありそう」というシーンも上手い。
ただ、全体を通して観ると監督の物語があまりに少ない。1本の非合法作品を撮るという行為をしている監督が、何を考え何を思っているのか。それがほとんど描かれていない。
脚本も薄っぺらく。物語としての密度も低い。
同じくブルーフィルムの監督を描いた神代辰巳監督の『黒薔薇昇天』と見比べれば、その密度の差がハッキリと分かる。
ロマンポルノという枠の「ある意味での」限界なのかもしれない。