Yuri

哀愁しんでれらのYuriのレビュー・感想・評価

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
3.3
TCPの前GP「嘘を愛する女」が肩透かしだったので、本作はどうだろう?と思いながら観に行ったのですが、言葉に表しにくい人間心理を突いた作品で中々、面白かったです(^^) 田中圭と土屋太鳳の2人も一緒にいるのが自然というか、相性の良さが出ていて観ていて安心感があります。泉澤家の3人は異常というわけではなく、それぞれが「ああ、いるよね」という範囲の歪さがあるだけで、その歪さを補い合うのが「家族」という共同体だけど、この3人は完璧を追い求めるあまりにそれが出来なかった。話し合うことをせず、結果以外評価せず、原因を外部に求め、それぞれの救難信号の受け止め方を曖昧にしてしまった。小春のように「私はこうはならない」と理想があるタイプは、そうでない現実にぶつかった時、脆く壊れやすい。だから耐えられない問題が起きた時、真正面から向き合う勇気が持てないのだ。大悟も表面的なモノしか見えていない人間だけど、ヒカリや小春を大切に思っているし、ヒカリなんて本当にごく普通の子どもなのに。社会的な立場のある男性の妻になった女性が、常識的な人だったのに一転、夫のおかしな世界に従い生きる心理が不可思議だったのですが、こういう心理状態なのかと納得しました。小春同様、元々、常識人だっただけに違和感は半端ないはずで、これは苦しいだろうなと思ってしまいました(>_<) 小春は2人の内の負のパワーが強過ぎて、転がり堕ちるのを止められなかったのだと思います。小春が境界線を超える瞬間がさりげなく表現されていたけれど、本当に小さなボタンの掛け違えを何度か重ねてしまっただけで、誰もが陥る危険性、もしくはもう片足を突っ込んでる可能性のある悲劇を描いているので、リアルな恐怖がありました。最後の展開はあくまで象徴というか、無理がありましたけど(^_^;) テーマカラーが青ではなく毒を孕んだ赤や紫で、泉澤家のシンデレラはヒカリで、小春は継母だと象徴しているかのようで面白かったです。やはり、大切な人が間違えた時、叱り、正しい方向へ一緒に歩むことが本当に相手を大事に思うことだし、結婚は「幸せになるため」にするものではなく、「幸せにするためにその何十倍もの苦難を共に乗り越えること」だと、あらためて思いましたし、世の婚活シンデレラガールに警告の意味をこめて薦めたくなる作品でした(笑)
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