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哀愁しんでれらのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
4.7
児童相談所で働く小春(土屋太鳳)は、自転車屋を営む父、妹、祖父と共に暮らしている。
母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎日。
ところがある夜、祖父が倒れ、車で病院に向かうも事故に遭い、父が飲酒運転で連行されてしまう。
そんななか、火の不始末が原因で自宅は火事になり家業は廃業、さらに小春は彼氏の浮気を目撃、しかも相手は自分の同僚だった……。
一晩で全てを失った小春。そんな時に出会ったのが、8歳の娘・ヒカリ(COCO)を男手ひとつで育てる開業医・大悟(田中圭)であった。
優しく、裕福な大悟からプロポーズを受ける小春。
「ただ幸せになりたい」と願う小春は彼を受け入れ、不幸のどん底から一気に幸せの頂点へ駆け上がる。
まさにシンデレラとなった彼女は、夫と娘と共に幸せな家庭を築いていこうと決意し、新婚生活をスタートさせる。
だが、夫と娘の知らない素顔と闇を、小春が知った時、御伽噺のような幸せに影が差していく。
TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016でグランプリを受賞した自作の脚本を、「かしこい狗は吠えずに嗤う」の渡部亮平監督が土屋太鳳主演で映画化。
「シンデレラ」をオマージュしつつ、イケメン医師の大悟と無邪気で明るいヒカリの知らなかった隠された闇に、「幸せになれるのだろうか?」という女の子特有の不安と「あんな親になりたくない」という強迫観念に囚われた小春が次第に取り込まれ、家族を守り幸せになりたいという思いから「ミイラ取りがミイラになる」恐ろしい展開に雪崩れ込むのが、御伽噺のような感じを演出したカラフルな衣裳やミュージカル的な演出や伝染する仕草と特殊な家族のルールにより居場所と夫と娘から与えられる役割に次第にハマっていく小春を鬼気迫る熱演で演じた土屋太鳳の大人の女優に脱皮した演技やサイコパスみの素顔がある大吾を演じた田中圭と明るい無邪気な娘のヒカリを演じたCOCOの演技で巧みに描いていて、家族という煉獄に囚われた幸せに絡め取られていくシンデレラをひっくり返すイヤミス的なサスペンス映画。
「女の子は、漠然とした不安に囚われている。私は幸せになるのだろうか?」
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