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パラサイト 半地下の家族 (モノクロVer.)のマチのレビュー・感想・評価

3.6
格差社会に対する問題定義をふくみ、名だたる映画賞を席捲した世界中で知らない人がいないんじゃないかってくらい有名な作品。
はじめてモノクロバージョンを鑑賞した。

個人的にはポン・ジュノの、少しだけチープに見える画が好きなので、モノクロだと雰囲気が良くなる分、そこが失われるのは残念。

社会的なテーマを持ちながら、半地下の家族、全地下の夫婦、社長家族に至るまでどちらかというと記号的な人物が登場する。とくにあの思考回路をもった社長夫婦がリアル世界でその地位を維持できるか疑わしい。寄生をすすめる際の都合のよい展開も含めて、あくまでもフィクションの道具立てにより多くのことが成り立っている作品ではある。

だからといって「つまらなかった」と言いたいわけではない。むしろ現実的でない道具を使って、リアリティあるテーマ性やストーリーを、監督が意図したとおりに読み解ける仕上がり方が凄い、といいたい。
フィクションの力、映画の力が十分に発揮され、伝えたいテーマがきちんと観客に誤解なく届けられた素晴らしい作品なのだ。たぶんドキュメンタリータッチならこうはならないと思う。

ただし観客が個々に映画の解釈を巡らせられるような余白は少ない。
そういった作品群とは対極の仕上がりとなっていて、そこに不満を感じる人の気持ちも理解はできる。
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