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百万粒の涙のkuuのレビュー・感想・評価

百万粒の涙(2015年製作の映画)
3.7
『百万粒の涙』
原題 Des millions de larmes/Millions of Tears
製作年2015年。上映時間23分。
失敗と、その結果として生じる罪悪感との関係に焦点を当てています。
なぜその感情に興味を持ったのか?
フランス製ショートフィルム。

フランス南東部、カマルグの人里離れた片隅。
(場所については監督が言及してました。)
60代初老男(監督自身が演じてる)が一人、道沿いにあるガラガラのレストランで誰かを待っている。
若い女が一人やって来る。
人生丸ごと入っているようなリュックを抱え、 とても疲れているようだ。
男は女に途中まで一緒に行かないかと誘い、女はその誘いを受ける。。。

BS松竹東急短編映画劇場で何気に観ました。

短編映画てのは、家族やマクロの社会単位の意味を問うのに効果的だと思います。
また、短編映画は個人的には、文学における短編小説や小説のような、独立した映画ジャンルだと考えてます。
映画の中では家族関係、特に父と娘の関係に焦点を当てた作品が数多にある。
しかし、今作品は既存の絆ではなく、これから生まれる(かもしれない)関係に取り組んだ物語となってました。 
作中、老人と若い女性の二人のキャラが出会い、関係を築くに至るまでのさまざまな可能性や道を短い時間にどう納めるか、製作陣が模索したのが真摯に伝わる。
老人はまるで、モーパッサンの『ピエールとジャン』における、彼の心のどこかに、ピンポイントの痛みがあり、それはほとんど知覚できない傷のひとつで、指一本触れることもできないが、我々を不快にし、疲れさせ、憂鬱にし、いらだたせて、それは、小さなものであったとしても、わずかでオカルト的な痛みを持つみたいな感じで『苦悩の種』を抱え込んでるよう。
若い女性の方は、少し粗野で、無作法で、そして、彼女を困らせるものは何もなく、必要最低限のものだけを持って旅に出たよな旅女。
必然的にと云わんばかり。
なぜなら、彼女が今いる場所に留まることはもはや不可能だから。
彼女は根こそぎ自分を引き上げて、自分の可能性を発揮するために別の場所に植え替える必要のある。
また、彼女はより大きな自由を求めているかのようで、精神的にも地理的にも自由になっている彼女は、家族との絆を断ち切っているように見える。
これは、過度な解放がしがらみを断ち切ることにつながるのか、それとも解放がしがらみを断ち切ることにつながるのかを示したかったのだろうか?
こないな二人のロードムービー。
他者に何かを与える寛大さがあり、教訓ではなく、思い出すためのキッカケを的確で優しい方法で作っていました。
人生を決定づける基本的な部分を映し出すってまでは云わないまでも、いや、云えるかな?自己省察のサポートとなるオシャレな映画でした。
新奇さはないけど、撮影と演技が美しく、そして巧みで面白かった。
実際、ガキの頃、独り旅をして沢山の人の情に触れた経験があるし、物語全体が身近なもの以上に思えた。
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