ペコリンゴ

夜よ、こんにちはのペコリンゴのレビュー・感想・評価

夜よ、こんにちは(2003年製作の映画)
3.5
記録。
揺れる正義と夢見た結末。

極左テロ組織「赤い旅団」が1978年に起こしたアルド・モーロ元首相誘拐暗殺事件を題材にした作品。イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督作。

2021年現在において、赤い旅団やモーロ元首相についてよく知る一般よ日本人は珍しい部類であろう。かくいう僕もそう。前者について何かの書籍で目にした事がある、その程度。

日本国内で例えるなら「あさま山荘事件」で有名な連合赤軍(こちらも世代的に良く知らないのだけど…)が田中角栄を拉致して…みたいな感じだろうか。とにかく国のトップとして君臨した人物の暗殺となれば、国民にとって如何にショッキングであったかは推して知るべしだ。

自らを革命の闘士とし博愛主義は不要だと断言するメンバーと、旅団の一員ながら自身の「正義」に徐々に揺らいでいく紅一点キアラ。

劇中で描かれるモーロは目の前にいるのがテロリストであっても彼らの主張に耳を傾け調和を見出そうとする真っ当な人物だ。そんなモーロの姿を見続けてきたキアラの目に流れる一筋の涙に、切ない人間らしさを見た。

来ることの無かった未来を夢見ても、時計の針は決して戻せない。