いちじく

いのちの停車場のいちじくのネタバレレビュー・内容・結末

いのちの停車場(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

最初は大きな病院で人を助けてきた彼女と、地方のリアルな人間生活を送ってきた人たちの実態とはギャップがあって、受け容れることも、そして受け容れられることも難しいのかと思った。けれど、思ったよりもスムーズに彼女はまほろばに溶け込んでいって、そこは主題ではないのだなと思った。
本人に寄り添いながら、支える周りにも寄り添わないといけない、医療従事者って難しい職業なんだと感じた。周りが思い詰めすぎてもいけない、思い入れすぎてもいけない。本人が本当に望んでいることに向き合わなければいけない。闘病生活は共闘なのだろう。
医療従事者自身はそうやって他の家族と向き合いながら自分の家族とも向き合わねばならない。白石先生の苦悩は大きなものだったのだろう。自分に医療知識があるからこそ、苦しむ父親とより深い解像度をもって向きあうこととなってしまう。映画という作品は美しく幕を下ろしてくれるけど、現実はきっとそんなに優しくはないから、もっとたくさんの苦悩と苦難が与えられることもあるんだろう。
最後に、吉永小百合さんという人が演じるからこその、この美しくあたたかい白石先生だったんだろうなあと思う。この人の演技が、声が、この役をつくりあげたんだと感じた。メインの役者さんが大御所揃いなのもあって、話に没頭しやすくとても見やすい映画だった。
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