とても胸を熱くさせる素晴らしい映画でした。
この映画について、あまり多くの事を語るのは難しく、様々な感情が入り混じり整理のつかないままであるが
この映画はそんなふうに人の気持ちを掴んで離さないものがあった。
舘ひろし演じる柴咲組親分から、綾野剛演じるケン坊へ繋がっていく思い。
そしてケン坊から磯村勇斗演じる翼に託され、そして…
血の繋がりとは違う、家族という絆と愛を、人から人へ紡ぎ繋いでいく。
この深い情をこの映画から観て感じ取り、こんなにも美しいものを受け取り、この生きていく今を自分はどう人に思いを伝えて過ごしていこうか考えさせられる内容だった。
親父がケン坊を力強く抱きしめる姿は間違いなく親の愛情そのもので、またケン坊が翼を抱きしめるシーンも深い愛情に包まれていた。
ただ、その先に待ち受ける事を、物語らせる様に酷く心が痛み、辛く、とても胸を締め付けた。
ラストシーンでの翼の、思いを繋ぐ相手がいたことへの嬉しさやもう失ってしまったことと遅過ぎた出会いへの悲しみの入り混じった表情が
とても辛く優しいもので溢れたものであることにもとても熱くさせられた。
セリフで多く語らせることの多い今日の作品に比べて、表情や情景で物語らせようとする監督の手法は
新聞記者の時にも感じていたけど、本当にとても良く仕上がっていて
これからの日本の映画が取り戻すべき表現であるととても感銘を受けた。
自分は新聞記者を観てから、すっかり監督のファンになってしまったようです。
綾野剛の年を追うごとに変化する様子や優しい穏やかな表情、ヤクザながらの鬼気迫る演技はまさに彼の集大成だと思います。
それにしても、温厚な人柄の柴咲の親分が一度だけ見せたあの脅しのシーンでの感情。
そのドスの効いた声と末恐ろしい表情に
観ているこちらも背筋が凍り生唾を飲んでしまうほどに素晴らしい演技でした。
ヤクザという稼業が、時代が変わり肩身が狭くなり淘汰され、更には関わり合いを持つ人までもが迫害されるようになり、彼らは人権を奪われてしまっている。
そんな彼らの守ってきた仁義や人情はどこに行ってしまうのか。
この映画を通じ感じた事は、そうした彼らが大事にしてきた事そのものは
今の時代だからこそ必要なものであること、人と人の繋がりが、どんなふうに周りに影響を与え
どれほど大きなものなのかという事。
決して忘れてはいけない、そうした絆を、しっかり持って生きていかなければならないと思いました。
人から人へ、思いを繋ぐ。
にしても、監督。
公務機関の人間を本当ドス黒く汚らしく描く天才かな…(笑)