MidoriK

ヤクザと家族 The FamilyのMidoriKのネタバレレビュー・内容・結末

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

胸を打たれる、というより突かれる様な映画でした。
昔ながらの義理と人情で極道の世界に入った山本と、その山本を受け入れた柴崎、そして次を生きる翼。

監督が描きたかったことがよく表現されていると思いました。3本の軸にしたのはわかりやすいと思います。
特に2019年の山本の浦島太郎っぷりと、悲哀の色が濃くなっていくのが見事です。
豊原功補、駿河太郎、菅田俊あたりの極道っぷりが様になっていて、普通に怖かったです。
市原隼人の人間の弱さが出ているのも似合ってました。
岩松了の黒い刑事がいそうで本当にやだ。

この映画は決してヤクザを称賛しているわけではなく、1人のヤクザの男の人生を追い、彼を通してヤクザを描いています。
だから彼の人間らしい一面も描かれるし、ヤクザとしての宿命も均等に描かれます。
だからこそ、彼の境遇や決断を支持するわけではないけれど、凄く胸が苦しくなりました。
特に時代の変遷と栄枯必衰のクライマックスにずっと泣いてました。
山本はきっと、柴崎が山本を守ったように、翼という家族を守ったんだと思います(ヤクザではないですが家族だと思っていたはず)。
そして、竜太のことも受け入れた。
綾野剛が本当に良かった。

舘ひろしの昔気質な組長がかっこいい。
悪いことしてきたとか、極道しか知らないという黒い部分だけでなく、組を家族として受け止める度量が見える。
組長はきっと時代のうねりに勝てないことをわかっていた気がします。
だからやめていく人を引き止めなかったし、残っていく人も守ろうとしたのかと。
優しい人でしたね。悲しいというより寂しかったです。

そんなひと昔前の「匂い」を嗅いで育った翼は、絶妙なバランス感覚で育ったんだなと思いました。
次世代っぷりが上手かった。
翼が最後、彩の言葉を聞いて破顔した時、山本が知っている翼に戻った気がしました。

個人的には、犯罪は良くないし、薬はダメ絶対だと思います。
でも疑似家族というシステムは悪くないと思いますし、
家族にまで及ぶ人権の扱われ方は今一度考えてみるべきなのかなと感じました。

義理人情でやっていけなくなったのはヤクザの世界だけなのでしょうか。

山本の父は海に飛び込んで亡くなりました。
山本は唯一人間的に接せられる由香のことは海に誘ってましたね。
そして最後は自分も海で亡くなりました。
最後は何を感じて死んだのか、でもきっと父親とは全然違うと思います。
留守電のメッセージが全てだと思います。
生きていて欲しかったです。
MidoriK

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