Melko

ブリキの太鼓 ディレクターズカット版のMelkoのレビュー・感想・評価

3.6
「僕は奇跡と幻滅の中間に生まれた」

「この日、大人たちをたっぷり観察し、自分が大人になることを想像した僕は、成長を止めることにした。1センチだって成長なんかしない。3歳の肉体のままでいよう。小さいままで」

「オスカル君、君の仲間の言葉を信じなさい。我々に観客席はない。」

アマプラ良い仕事したね、第5弾!

この作品がアマプラで見れる日が来るとは…

う〜ん、前評判通り、なんとも摩訶不思議で気持ち悪い作品だった…

盗人を父に持つ女アグネスは情緒が不安定
夫アルフレートは豪傑だが人の話を聞かない
恋人ヤンは繊細で優しいが、優柔不断で小心者
アグネスは、夫と恋人と3人で仲睦まじく暮らそうとする貞操観念のぶっ壊れ具合。夫も恋人も、お互いの存在やオスカルの父が誰かということには気づいてる。紛らわすかのように中身のない話をツラツラとして、現実から目を背けようとする3人。
そんな彼らを嘲笑うかのように、心ならずも彼らの人生を少しずつ不幸にしていくオスカル。
3人とも満点の大人では無かったけど、各々オスカルのことは心から愛していて、それがちゃんと見てる側にも伝わるのだけど、それを超KYな感じに踏み潰していくオスカルにイライラしてしまうし、と同時に、どう転んでもあの環境では普通に育つことはできなかった彼の境遇を思うと同情してしまう。
物語はこの繰り返し。

70年代の作品とはいえ、やはり物議を醸したのか。オスカルのギリギリアウトな性描写…
股間に顔、シュワシュワの粉に唾かけるのとか、夜這いとか、なんかマジで気持ち悪かった。
そう思わせるぐらい、とにかくマセたオスカル(役の子役)の演技が絶妙。あの顔が強烈なインパクト。
ホントにその小さな体に大人の男性が入ってるのでは、と感じる、大人を見る冷めきった目。小人症の役者なのかと思ったけど、声が子供なんだよな、と調べたら、普通の子供だし、当時11歳…

昨日の友は今日の敵
誰につく、どっちに味方する?で振り回される市井の民たち
戦争なんて、なんてバカバカしいんでしょう
現実から目を逸らそうとする大人、見据える子供
戦禍でも逞しく生きる子供、絶望して逃げるだけの大人

自分の生きる方向を自分で選んで進むのか、ただ首を垂れて頭を叩かれるのを待つだけか
おばあちゃんは残ると言ったけれど、あれは土地を守ると意志ではなくて、諦めか

ヒトラーの集会が、オスカルの暴走太鼓のせいで途中からダンスパーティになったのはちょっと笑えた笑
Melko

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