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太陽がいっぱいのfujisanのレビュー・感想・評価

太陽がいっぱい(1960年製作の映画)
3.8
アラン・ドロンを一躍世界的スターに押し上げた1960年の古典的名作。

パトリシア・ハイスミスの同名小説を原作とし、地中海の優雅な風景のなか、不遇な青年リプリーと、イタリアで優雅な放蕩生活を送る富豪の青年グリーンリーフとの愛憎入り交じったサスペンス・ドラマです。

先日、マット・デイモン主演で2000年に再び映画化された「リプリー」のレビューで、本作と2000年の映画「リプリー」、そして今年NETFLIXでドラマ化された3作品の比較を行いました。

    太陽がいっぱい  リプリー(本作) ドラマ版
リプリー  不遇な青年   自分探し中   狡猾で不気味
GR   嫌味な金持ち  傲慢だが優しさも  いい人
https://filmarks.com/movies/16735/reviews/173583486

あくまで私見ですが、三作品のなかでは、本作のアラン・ドロン版リプリーが ”最も共感できる主人公” として描かれていたように思います。

本作でリプリーを演じたアラン・ドロンは当時25歳。現在88歳ですでに俳優は引退、様々ご病気と闘われているようですが、写真を見ると、いまだに普通のお爺さんよりオシャレでカッコいいんですよね。

そんな25歳当時のアラン・ドロン。なんなら恋人役マルジュを演じたマリー・ラフォレよりも色気があって美しかったかも。。それは言い過ぎかもしれませんが、とにかくアラン・ドロンの魅力そのものが本作の最も大きな魅力と言えるでしょう。

一方で、マット・デイモン版ではジュード・ロウが演じた放蕩息子グリーンリーフ。
本作では、目の不自由な方の白杖を金に任せて買い上げたり、ヨットで恋人と二人きりになるためにリプリーをボートで漂流させたりと、意地悪で嫌味なお金持ちの雰囲気がありました。

リプリーは決して善人ではありませんが、グリーンリーフの演出によって善悪の構造が分かりやすくなり、感情移入しやすい映画になっていたことも、本作の人気の理由の一つかもしれません。



マット・デイモン版やNETFLIXドラマ版を観てから本作を見ると、序盤にリプリーがアメリカからイタリアへ赴くくだりがバッサリとカットされていることに驚くと思いますが、編集や脚色によってずいぶん印象が違うんだな、ということが分かります。

本作はアラン・ドロンの魅力が発揮できるヨットのシーンが他の作品よりも長くなっており、一方でグリーンリーフと悪友フレディの関係や、恋人マルジュとの恋人関係はほとんどカットされていて、原作に忠実な他の2作品に比べるとかなり大胆な脚本。

一方、偽造サインの練習シーンを丹念に長時間描くことで、リプリーが真面目さと大胆さを併せ持つ性格が分かり、中盤からの急な展開にも納得感を持たせていました。

三作品、どこをカットし、どこを丹念に描いているのかで作家性の違いも出ていて、そういう見方でも楽しめる作品。
これだけ度々映像化されると言うのも、いかにパトリシア・ハイスミスの原作がよく出来ているかということなんでしょうね。

リプリーの物語は本作以降も続き、ヴィム・ヴェンダース監督などが映画化していますが、ヴィム・ヴェンダース監督は昨年の「PERFECT DAYS」でも役所広司にパトリシア・ハイスミスの短編集を読ませていて、巨匠にもファンが多い事が分かります。

昨年、「パトリシア・ハイスミスに恋して」というドキュメンタリーが公開されていましたが、ようやく配信に回ってきたようなので、こちらもGW中に観ようと思ってます!

余談:
リプリーはゲイであるという描写は、本作にはほとんど無かったように思いますが、それについてはFILMAGAのこちらが面白かったので参考まで。

アラン・ドロン引退宣言!いまこそあの“ゲイ映画説”を徹底検証 | FILMAGA(フィルマガ)
https://filmaga.filmarks.com/articles/1246/
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